まとめると
・同意書は原則とすると出すべきだが、場合によっては出さないことも考えられる
・「同意書を出さないと、治療費を払えない」と言われる可能性が高い
・ただ、同意書を出すと、保険会社から医師に不利な働きかけをされる可能性がある
なんで、交通事故で同意書をださなきゃいけないの？
交通事故の被害にあった際、加害者の保険会社から、同意書を提出するよう求められるのが一般的です。
同意書というのは、保険会社が病院（医師）に意見聴取をしたり、診断書をとりつけることに同意をするものです。
これがないと、保険会社が医師に意見聴取をしようとしても、「個人情報なのでお答えできません」と言われて拒否されることになるでしょう。
では、なぜ、保険会社は同意書の提出を要求するのか。
『治療費をお支払いするためです』と説明されるのが一般的です。
こう説明すると、「いやいや、別に医師の意見を聞かなくても、治療費は払えるでしょ。こっちでいったん立て替えるから、それで払えば良いじゃん」と思われる方もいるでしょう。
これはこれで、ごもっともな意見です。
しかしながら、治療費をいつまで支払うべきかというのは、実は、けっこう難しい問題です。
交通事故のため、ケガをした場合には、治療を行うことになるでしょうが、治療期間はいつまで、と明確に決まっているわけではありません。
交通事故によるケガは、そのすべてが完治するものではありません。
現代医学ではどうしても、限界があります。
そのため、痛みなどの症状が残っていても、これ以上、治療による改善が見込めないとなったら治療を打ち切られてしまいます（これを症状固定といいます）。
いつの時点が症状固定となるかは、ケースバイケースであり、このタイプの事故であれば、何か月と決められているものではありません。
そうすると、保険会社としては、いつまで治療費を支払い続けるか、交通事故と因果関係がある部分はどこまでか、ということを判断するために同意書を求めるのです。
治療費を払ってもらうためにも、同意書は出した方が良いケースが多い
治療費をきちんと支払ってもらうためにも、同意書を提出したほうが良いケースは多いです。
もちろん、同意書を出さずに、後々になって、「これだけ治療費がかかったんだから、支払え」ということも考えられますが、このようなことをすると、保険会社側としても、治療費を争ってくる可能性が高いでしょう。
そうすると、治療費を払ってもらえるもんだと思って通院していたのに、後々になって争われて、一部の治療費が自己負担になってしまうこともあります。
（同意書を出して、治療費を支払ってもらっていたケースでも、後々になって、保険会社が争ってくる可能性はありますが、いったん支払ってもらった場合と比べると、可能性は低いでしょう）
治療を払ってもらうためにも、同意書を提出したほうが良いケースは多いです。
同意書を出すデメリット
ただ、同意書を出すことが不利益になるケースもあります。
同意書の提出により、保険会社から医師にアクセスすることが可能となりますので、保険会社が医師にはたらきかけて、被害者に不利な証言を引き出そうとしたり、症状固定をはやめるような働きかけをされるケースもあります。
実際、保険会社側（そのケースは保険会社から依頼を受けた調査会社でした）が、臨床医に直接面談を求め、臨床医から被害者に不利な発言を引き出し、それを録音していたというケースもありました。
そのため、複雑で、医師の協力が必要不可欠なケースであれば、医師の判断を捻じ曲げられないためにも、同意書を提出しないという判断もあるでしょう。
判断に迷われたら、一度、弁護士へに相談してみてはいかがでしょうか。