先日、赤い本別表Ⅱの算定基準が改定されたこと、改定によって、他覚所見のないむち打ち等でも慰謝料の計算は原則として通院期間をもとに算出されることになったと解説しました。
これによって、『慰謝料計算の場面では』実通院日数の重要性は下がったと言って良いでしょう。
だからといって、通院を軽視すると慰謝料以外の場面でマイナスの影響が出てくることがあります。
今回は、因果関係の問題についてとりあげていきます。
ケガをしたらできるだけ早く病院へ
交通事故の被害にあって、目に見える傷がある場合はもちろん、身体に違和感を感じたらできるだけ早く病院に行って診察してもらうべきです。
痛いけど我慢するというのはおすすめしません。
脳など目に見えないところに異常が発生している可能性があることはもちろん、因果関係の点でも問題が出てくる可能性があります。
交通事故から初回の通院日まであまり時間が経過すると、
「たしかに病院に通院しているようだけど、それ本当に交通事故が影響してるの? 普通、痛かったらすぐに病院に行くよね。事故日からかなり時間が経過しているけど、実は何か別の原因があるんじゃないの」
と疑いをもたれる危険があります。
交通事故が原因で通院することになったという因果関係は交通事故の被害者が立証する必要があります。
交通事故にあった後に痛みが出てきたんだったら、因果関係があるのなんて当たり前だろと思われるかもしれません。
ただ、痛かったかどうかなんていうのは被害者の自覚症状に過ぎず、証拠がありません。
裁判では証拠をもって裁判所を説得する必要があります。
真実は交通事故が原因で痛みが出ていたとしても、証拠がなければ裁判所は認めてくれません。
これは私の経験ですが、おおむね事故から初回通院日まで1週間以上経過していると因果関係を争われる可能性が高くなるように思われます。
ただ、これを見て事故から1週間以内に通えば大丈夫と安心はしないでください。
交通事故日から初回通院日まで1週間以内のケースでも因果関係を争われる可能性は否定できませんので、お身体のためにも早期の通院開始をおすすめします。
通院と通院との間の時間が空きすぎないように注意
これも因果関係の問題です。
たとえば、事故から2か月間は整形外科にきちんと通院していたけども、その後通院をやめてしまって、1年以上空けてから通院を再開したとします。
このようなケースでは、
「事故後2か月でケガは治ってたんじゃないの(もしくは症状固定)。1年以上あいてるのは、交通事故以外の別の原因があるんじゃないの」
と疑いをもたれる危険があります。
このように通院日の間隔が空きすぎると、症状固定もしくは治癒したから通院をやめたんじゃないかとの主張を許すおそれがあります。
じゃあ、どれくらいだったら大丈夫かというと、これもケースバイケースなのですが、私の経験上、通院期間が1か月以上空いてしまうと因果関係を争われる可能性が高くなるように思われます。
1か月に1回通院しとけばOKと考えるのは危険ですが、最低でも月に1回は通院をしておくことをおすすめします(もちろん症状の程度や治療の内容にもよります)。