まとめると
・労災事故なのに、健康保険を誤って使ってしまった場合でも、労災保険への切替えが可能
・病院が手続可能であれば、書類を提出すれば、窓口で自己負担分を返金してもらえる
・病院で手続できない場合には、いったん治療費全額を自己負担した上で、返金の手続ができる
労災保険にするか健康保険にするかは自由に選べるものではない
そもそも、労災保険を利用して治療を受けることができる場合には、健康保険は利用できません(国民健康保険法56条、健康保険法55条を参照)。
労災保険を利用するか、健康保険を利用するかは、被害者の自由な意思にゆだねられている性質のものではないので、注意してください。
労災保険は健康保険よりメリットがある
そうは言っても、実際問題、これが見逃されて、本来、労災事故であるにも関わらず、健康保険を利用している例も多くありません。
こういう場合には、労災保険に切り替えるべきでしょう。
労災保険への切替えは、何も手続が変わるだけではありません。
交通事故の被害者にもメリットがある場合があります。
メリットは様々なものが考えられますが、
(1)被害者にも過失があっても、労災保険なら治療費の負担がないので安心
(2)特別受給金を受け取ることができる場合、補償される金額が実質的に多くなる
という点が大きいでしょう。
健康保険から労災保険への切替手続1
健康保険から労災保険に切り替えようとする場合、まずは、病院の窓口に連絡して、切替えが可能か確認されると良いでしょう。
病院で切替えが可能な場合には、労災保険の様式第5号(通勤災害は16号の3)に必要事項を記入の上、病院に提出します。
すると、病院の窓口で今まで支払った分(健康歩保険の自己負担額)が返還されることになるでしょう。
健康保険から労災保険への切替手続2
それでは、病院で切替手続ができない、と言われた場合には、どうすれば良いのでしょうか。
この場合には、いったん、治療費全額を自分で支払う必要があります。
全額と言うのは、自己負担分だけではありません。
健保等が支払った部分(医療費が3割負担なら、健保等が支払った残りの7割)を支払う、という意味です。
加入されている健康保険協会などに連絡し、労災事故であった旨を伝えると、医療費返還の通知と納付書が届くでしょうから、それを支払います。
そして、返納金の領収書と、病院で支払った自己負担分の領収書を添えて、労働基準監督署に医療費の請求をする流れとなります(このさい、労災保険の様式第7号(通勤災害は16号の5)に必要事項を記入の上、提出します)。
すると、医療費全額(自己負担分3割+健保等がいったん支払った7割)が振り込まるでしょう。