症状固定とは
症状固定とは、治療を続けてもそれ以上の症状の改善が見込めない状態を言います(東京地判平成24年7月17日・自保ジャーナル1879号25頁参照)。
交通事故の被害にあってケガをしてしまった場合、医師の治療を受けるのが一般的です。
しかしながら、現代医学は万能ではありません。
どんなに治療を続けても、これ以上はどうしようもない、ということがあり得ます。
たとえば首や腰など事故で受傷した部位に痛みが残っている場合には、リハビリをして痛みを軽減させていくことになるでしょうが、完全に痛みがとれてしまう人もいれば、治療の甲斐なく痛みが残ってしまう方もいます。
このように、痛みが残ってしまった場合には、痛みがある限り永遠に治療費が支払われるわけではありません。
これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない(つまりは症状固定)ようであれば、以後の治療行為はムダに終わってしまいますので、加害者も支払う必要がない、ということになります。
それでは、この症状固定というのは誰が判断するのでしょうか。
症状固定は第一次的には医師が判断する
症状固定は、第一次的には医師が判断します。
治療によって改善が見込めるかどうかというのは、医学に精通していない人にはわかりません。
そのため、第一次的には、医師が症状固定日を決定します。
たとえば後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害診断書というものを医師に作成してもらうのが一般的ですが、この後遺障害診断書には症状固定日を記入する欄があって、医師がその欄に記入します。
保険会社が事実上、症状固定日を判断しているケースが多い
しかしながら、実際には加害者の保険会社が症状固定日を判断しているケースが多いです。
どういうことかというと、交通事故の被害にあった場合、加害者が任意保険に加入していれば、保険会社が医療機関に直接治療費を支払うことが一般的です。
保険会社としては治療期間が長引けば長引くほど支払わなければならない治療費も増えるので、症状固定日については大きな関心を持っています。
そのため、医師から聴取したり、診断書を見たりして、そろそろ症状固定ではないかと判断したら医師や被害者に働きかけることが多いです。
「何月何日までの治療費は支払うが、それ以上は支払えない」と治療費の支払いを打ち切ってしまうことも稀ではありません。
症状固定日についてもめたら、最終的には裁判所が判断する
もっとも、保険会社が症状固定と判断したからと言って、それで症状固定日が決まってしまうわけではありません。
症状固定日が争いになったら、最終的には裁判所が症状固定日を判断します。
というわけで、症状固定日の最終判断者は裁判所となります。
ここで重要なのは、
・裁判所は当然ながら保険会社の判断には拘束されません。そのため、保険会社の判断とは違う日を症状固定日とすることは稀ではありません。
・ただし、裁判所は臨床医の判断にも拘束されません。そのため、医師の判断よりも早い日(場合によっては保険会社の主張をする日)を症状固定日とすることもあります。
そのため、症状固定日というのは法律判断の一つになってしまいます。
症状固定日について加害者側と意見がわかれたら、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。