前回、芸能人が交通事故の被害にあった場合の逸失利益について解説しましたが、今回はモデルの逸失利益に関する記事です。
モデルの逸失利益
モデルも芸能人同様、モデルとしてどの程度の期間活躍できたかという期間が問題になりえます。
たとえばお笑い芸人であれば、若いうちしかできないということはなく、息の長い活躍をされている方もいます。
それに対して、容姿を重視されるモデルの方だと、どうしてもモデルとして活躍できる年齢というものは考慮せざるを得ないでしょう。
(もちろん、モデルと一口で言ってもさまざまであり、中年や高齢者のモデルもいらっしゃいますし、そういった方は逸失利益を請求できないというわけではありません。
また、若いうちは若者向けのモデルをし、中年になったら中年層向けの、高齢者になったら高齢者向けのモデルへと一生をかけてモデルとしての道を歩まされる方もいるでしょう。
ただ、裁判の場でそのような未来設計を立証するのはいささか困難です)
大阪地判昭和53年5月2日・交通民集11巻3号677頁
これは24歳のファッションモデルの方の後遺障害の事案です。
高卒後ファッションモデルとなり(ファッションモデルグループに所属)、その後、独立してフリーとなり、ファッションマネキン紹介所に登録。紹介所からのあっせんだけでなく、直接仕事の注文を受けるなどの活躍をしていた方の事案です。
この案件で裁判所は、「フアツシヨンモデルとしての稼働可能年齢は、三五歳ごろまでで、平均的モデルの年齢は、二二、三歳から二五歳ごろまでであり、右年齢以降モデルとしてのピークは下降線をたどることが認められ」るとしました。
大阪地判平成5年10月28日・交通民集26巻5号1284頁
これは20歳のモデル兼アルバイトの方が死亡された事案です。
この案件で裁判所は、「学校卒業後、単身大阪へ移つてモデル業に本格的に取り組んでいたこと、テレビ番組のレギユラーを始めとして一年目のモデルとしては比較的多くの仕事をしていたこと、モデルとしての将来性もあつたことが認められるから、モデル兼アルバイトとして三五歳まで一五年間稼働した蓋然性が高い」として、35歳まではモデル兼アルバイトとしての逸失利益を、その後67歳までは賃金センサスをもとに逸失利益を認定しました。
結局はケースバイケース
このように、上記2つの裁判例は35歳までの逸失利益を認定していますが、昭和53年と平成5年の裁判例であり、モデルの働きかたは当時からも変わっているでしょうから、そのまま通用するかというと疑問があります。
また、モデルの就労可能年数については裁判例の蓄積も少ないことから上記のような裁判例とは違う判断が出る可能性は十分にあります。
その人の人生に即して、交通事故さえなければどのような人生を歩んでいたかを立証し、裁判官を説得することこそが重要です。