まとめると
・交通事故を原因とする傷病の自覚症状は、交通事故当日に出るとは限らない。事故から時間が経過した後に症状が出ることもある
・異変を感じたら、できるだけ早く病院へ
・病院へ行くのが遅いと、事故と症状との因果関係を争われるリスクがある
・病院へ行く場合には、治療費の円滑な支払いのためにも、一般的には、相手損保に連絡するのがおすすめ
交通事故の影響による症状は、事故当日に出るとは限らない
交通事故による怪我は、もちろん、事故の瞬間から症状が出るものが多いです。
たとえば、骨折している場合には、激痛が走るでしょうし、場合によっては意識不明のような場合もあります。
しかしながら、交通事故にあった当日は、とくに痛み等がなかったのに、翌日以降に痛みや吐き気などの症状が出るケースもあります。
とくに、頚椎捻挫、いわゆるむち打ちの場合には、このように、後になって症状が出るのは稀ではありません。
たとえば、むち打ちによって、まれに耳鳴りが発生することがあります。
耳鳴りの発症時期は、事故から数日以内に発生したものが27%と少なく、2~4週間以内に発症したものが55%であったと報告されています(遠藤健司『むち打ち損傷ハンドブック第2版』(平成24年4月10日・丸善出版)43頁参照)。
また、高次脳機能障害のように、自覚症状が乏しく、事故から時間が経過していくにつれて、家族等が異変に気付くというものもあります。
このように、交通事故のために発生する症状は、何も事故当日に発症するとは限らないので注意が必要です。
痛み・しびれ等の異変を感じたら、すぐに病院へ
交通事故から、ある程度時間が経過した後に、痛みやしびれ等の症状がでてきたら、できるだけ早く病院に行くべきです。
痛いけど、どうせすぐに治るだろ、と過信するのは、リスクが高い選択だと言わざるを得ません。
リスクは主に2つです。
一つは、ご自身のお身体のためです。
自己判断で「問題ないな」と思っていても、検査をしたら、思わぬ傷病が発覚することもあるでしょう。
早期の治療開始こそが早期の症状改善につながるのではないでしょうか。
もう一つは、因果関係を争われるリスクです。
交通事故日から、最初の通院まで、あまりに時間が経過していると、相手方から、「それは交通事故と関係ないんじゃないの」と主張されるリスクがあります。
交通事故と痛み等の症状との因果関係は、被害者が立証していく必要があります。
そして、交通事故と自覚症状との間に因果見解があるかないかを科学的・医学的にはっきりさせるような検査方法は通常ありません。
そのため、「痛いけど、病院に行かずに我慢していた」というケースでは、因果関係の立証に失敗し、損害賠償が認められないリスクがあります。
また、急性期でないと確認できないような異常もあります。
たとえば、高次脳機能障害のケースでは、脳外傷の立証を求められるケースが多いですが、高次脳機能障害は、何も、脳挫傷の場合のみに発生するものではありません(そのため、脳外傷の立証に困難を伴うケースが少なくありません)。
容易には確認できない、脳の微細な損傷が原因の可能性もあります。
受傷後早期に(2~3日以内に)拡散強調画像DWIを撮影することによって、脳の微細な損傷を確認できる場合もあります。
このように、お身体のためにも、そして、法的には、因果関係を立証するためにも、何か異変があれば早期に病院に行かれることをおすすめします。
病院に行く際には、相手方損保にも連絡を
病院に通院する場合には、一般的には、相手方損保にも連絡を入れておくのが良いでしょう。
これは、相手損保に治療費を円滑に支払ってもらうためです。