同乗者のシートベルト装着は義務じゃない?
誰かが運転する自動車に同乗する場合、助手席の人はシートベルトを装着しなければいけない。
後部座席の人は昔はシートベルトをしなくても良かったけど、最近、シートベルトの装着が義務化された。
みなさんの認識はこのようなものではありませんか。
この知識は間違ってはいませんが、正確には次のようなものになります。
同乗者にシートベルトを装着させるのは運転者の義務。
同乗者がシートベルトを装着していなかった場合には、運転者が1点の違反となる(後部座席の場合は高速道路上のみ)。
同乗者自身に直接シートベルトの装着を義務づける法律上の規定はない。
つまりは同乗者のシートベルト装着は、道路交通法上運転者の義務であって、同乗者の義務と定められていないのです。
過失割合を決める際には、道路交通法上の義務違反も影響する
道路を通行する際には、道路交通法が定める優先関係に従わなければいけません。
青が進んでよし、赤が止まれなのは法律でそう決められているからです。
交通事故が起こった際に、こういった道交法上の義務に違反した場合には、違反した人の過失は重くなるのが一般的です。
同乗者がシートベルトを装着するのは運転者の義務ではあるが、同乗者の義務としては定められていないと上で説明しました。
そうすると、同乗者がシートベルトをしていなかったことは過失として考慮されないのでしょうか?
同乗者のシートベルト不装着が過失相殺の対象になることはある
この点についての裁判所の判断は実は分かれています。
シートベルトをしていなかったら一律に何%過失相殺する、という判断にはなっていません。
ただ、過失相殺が認められた裁判例も多くあります。
なぜ、同乗者自身にはシートベルトの装着義務がないのに過失とされてしまうことがあるのでしょうか。
それはシートベルトの不着用によって損害を拡大させているからです。
シートベルトは乗車人の生命身体を守るための器具です。
シートベルトを装着していればもっと軽いケガですんだはずなのに、それを怠ってしまったことが過失として考慮されていると考えられます。
過失相殺は5%~10%程度
過失相殺がされるとすると、おおむね5%~10%程度です。
シートベルトの装着義務は同乗者自身の義務と定められてはいないので、大きな過失は認められていないのでしょう。
過失相殺されないこともある。主張されたら弁護士に相談を
もっとも、同乗者がシートベルトを装着していないすべての場合に過失相殺が認められているわけではありません。
たとえば、シートベルトを装着していても意味がなかったような大事故の場合、相手方が運転者である場合などには過失相殺が否定されています。
このように、過失相殺の問題は複雑になる可能性がありますので、交通事故の問題で困ったら弁護士への相談をご検討ください。