まとめると
・弁護士は探偵ではないので、警察も捕まえられないひき逃げ犯等を見つけ出すのは困難
・ただ、加害者が不明だからと言って、交通事故では、何の保障も受けられないわけではない
・ひき逃げ等で加害者が不明な場合や、加害者が判明しても、自賠責保険に加入していないような場合には、政府保障事業によって、ある程度の保障が受けられる可能性がある
・政府保障事業も重要だが、人身傷害補償等、加入している保険で使えそうなものがないかには十分注意をするべき
ひき逃げされた場合、弁護士に依頼されても、犯人を見つけ出すことは困難
交通事故と言っても、様々な態様のものがあります。
その中でも最も困るパターンの一つは、ひき逃げ・当て逃げで、加害者が不明な場合です。
このような場合には、警察に犯人を捕まえてもらうよう、お願いするしかありません。
残念ながら、弁護士は探偵ではないので、「ひき逃げされてしまって、犯人がどこの誰だかわからない(警察すら把握できていない)。この人を探し出して、損害賠償義務を履行させてほしい」と言われても、難しいと言わざるを得ないでしょう。
犯人を捕まえるのは無理でも、何の保障も受けられないというわけではない(政府保障事業)
このような場合に、第一に検討すべきは、後述するように、利用できる保険がないかということでしょう。
しかしながら、交通事故の被害者の全てが、人身傷害補償等の保険に加入しているわけではありません。
このような場合には、政府保障事業の利用を検討するべきでしょう。
政府保障事業というのは、いわば自賠責保険のようなものです。
交通事故の被害にあったら、まずは、この自賠責保険から損害賠償金を受け取るということになるでしょう(任意保険会社が一括対応している場合、自賠責保険を意識する機会はあまりないかもしれませんが、このような場合でも、任意保険会社が、支払った損害賠償金のうち、その全部または一部を自賠責保険から受け取っているのが一般的です)。
自賠責保険は強制加入の保険ですが、中には法に反して自賠責に加入していない人もいますし、加害者が不明な場合には、自賠責保険に加入しているか否かすら分からないでしょう。
このように、加害者が自賠責保険に加入していない場合や、ひき逃げ等で加害者が不明な場合に、本来、加害者に請求すべき損害賠償金の全部または一部を支払ってくれるのが政府保障事業です。
政府保障事業も重要だけど、まずは、人身傷害補償保険も使えないか注意して
政府保障事業は、交通事故の被害者に、その被った損害の全てを、制限なく保障してくれるものではありません。
自賠責と同じような限度額が定められています。
限度額は、傷害部分については120万円となっています。
120万円というとけっこう大きな金額に見えますが、この120万円の中から治療費や休業損害、慰謝料等をまかなわなくてはなりません。120万円の限度額をこえることは、それほど珍しい事態ではありません。
つまりは、政府保障事業によっては、十分な保障を受けられないケースもありえます。
そこで、ご加入されている保険に、人身傷害補償等、使える保険がないか確認されることをお勧めします。
人身傷害補償を使えるからと言って、損害賠償金額の全てが填補されるわけではありませんが、それでも、政府保障事業よりも手厚い補償が受けられるケースが多いのではないでしょうか。
ひき逃げされて犯人が分からなかったら政府保障事業、という考えそのものは間違っていませんが、政府保障事業という明るい光にとらわれ、他に使える補償を見逃さないようご注意ください。