東京地方裁判所には交通関係訴訟の専門部がある
東京地方裁判所は日本で一番人口の多い東京を管轄するだけあって多数の事件を抱えています。
地方の裁判所では、刑事事件を扱う部と民事事件を扱う部はわかれているものの特定の事件のみを集中して扱う部署はないのが一般的です。
これに対して、東京地裁では審理の迅速化と深化のためでしょう、いくつかの専門部や集中部が設けられています。
交通事故関連訴訟に関しては、東京地方裁判所民事第27部が担当しています。
東京地裁民事27部(交通部)の新受件数
平成26年の東京地裁民事27部の新受件数は1891件で、昨年比2.5%増となっています。
交通事故の発生件数自体は減少傾向が続いているの対し、新受件数の増加傾向が続いており、その原因について、
(1)保険会社の保険金支払いの査定が厳しくなったこと
(2)インターネットの利用により被害者が交通事故の損害賠償に関する情報にアクセスしやすくなったこと
(3)自動車保険に弁護士費用補償特約がつくようになり、訴訟提起も容易になったこと
(4)高次脳機能障害など示談では容易に解決しえない問題点を含む事件が増加していること
があげられています(森冨義明「東京地方裁判所民事第27部における交通関係訴訟の審理」森冨義明・村主隆行編『交通関係訴訟の実務』57頁)。
交通事故に関して訴訟をしたからといって判決だけが解決手段ではない
訴訟をしている以上、弁護士は依頼者に有利な判決の獲得に向けて全力を尽くします。
ただ、訴訟=判決とはなりません。
もちろん、中には双方が引けず着地点を見いだせないような事件もありますが、交通事故に関する訴訟はその多くが和解で終わっているのが現状です。
東京地裁民事27部(交通部)では、平成20年度以降おおむね70%前後の和解率だそうです(森冨義明「東京地方裁判所民事第27部における交通関係訴訟の審理」森冨義明・村主隆行編『交通関係訴訟の実務』68頁)。
むしろ判決までいくほうが少ないといえます。
訴訟をせざるを得ないような案件もありますが、訴訟をしたからといってそれでゼロかヒャクかの判決まで一直線となるわけではありません。
加害者側保険会社の中には訴訟をしない限り、自賠責基準などとても話にならないような提示しかしないようなところもごく一部ですがありますので、時には訴訟を恐れないことも必要でしょう。
なお、東京地裁民事27部では、和解勧試をするにあたって、弁護士費用を計上しないもののその代わりに事故発生時から和解時までに発生する遅延損害金相当額の半分程度を「調整金」として加算するのが通例だそうです(森冨義明「東京地方裁判所民事第27部における交通関係訴訟の審理」森冨義明・村主隆行編『交通関係訴訟の実務』69頁)。