まとめると
・治療費が高額になっているケースでは、早期の打切りを打診されることが多いように思われる
・たとえば、接骨院や整骨院に、並行して高頻度で通っている場合や、診療報酬単価が高額で、医療費が高額化しているケース
・相手方損保(共済)によっては、支払が渋いところもある
むち打ち・頚椎捻挫等の治療費支払期間について
交通事故のため、むち打ちや頚椎捻挫、腰椎捻挫等となった場合、治療費をいつまで支払ってもらえるかという問題があります。
抽象的に説明すると、症状固定時までとなりますが、具体的にはケースバイケースです。
1か月程度で保険会社が症状固定と判断し、早期に打ち切られる方もいれば、2年ほど治療費の内払いを打ち切られないまま治療を続けられている方もみます。
症状の程度等にもよりますが、保険会社が早期に治療費の打切りを打診してくるケースにはいくつかの特徴があるように感じられます(統計をとったわけではなく、印象ですが)。
治療費が高額になっているケース
交通事故の加害者側保険会社は、被害者に対して、被害者の損害を賠償します。
損害賠償の中には、当然、治療費も含まれています(もちろん、物損のみのケースでは治療費はありませんが)。
交通事故の治療費は、決してバカにできる金額ではありません。
普通、病院に通われる場合には、保険証を使って治療を受けられるでしょうが、交通事故の場合には自由診療で通院されるケースが多いです。
自由診療の場合には、医師は、保険診療の場合に比べて、1.5倍~2倍程度の治療費を請求しているケースもあるようです。
すると、半年通院するだけでも、治療費は、数十万円はかかるでしょう。
治療費が高額になっているようなケースでは、保険会社側としては、早期に治療を打ち切りたい、と考えてもおかしくないでしょう。
しかしながら、単純に、自由診療だからという理由だけで早期に打ち切られるかというと、そうではないように思われます(治療が自由診療であること自体は、保険会社としては、織込み済みではないかと思われます)。
(1)医師による治療と平行して、接骨院や整骨院に通院しているケース
交通事故のため、むち打ちや頚椎捻挫となった被害者のうち、接骨院や整骨院に通院される方もいらっしゃいます。
施術費が損害として相当性があるかという問題もありますが、保険会社としては、接骨院や整骨院への通院を認めるケースも多いでしょう。
接骨院や整骨院へ通うケースでは、通院頻度が非常に多いケースが目立つように思われます。
一回あたりの施術費が安くとも(安いかどうかはその接骨院・整骨院によりますが)、「塵も積もれば山となる」という言葉があるように、接骨院や整骨院の施術費は、ばかにできないほど、高額になることがあります。
これに、医師の自由診療による治療費が組み合わさると、保険会社側としても看過できないほどに、治療費が高額化することがあります。
これだけで断言はできませんが、実際に相談を受けていると、治療の早期打切りを打診される被害者は、接骨院・整骨院に並行して通院されているという方が多いように思われます(もちろん、接骨院や整骨院に通ってはいないけど、早期の治療打切りを打診されるケースもあります)。
(2)診療単価が高額だったり、不自然な通院をしているケース
自由診療の場合、医師が診療報酬の単価を決めますが(正確には契約で決めますが)、この診療報酬単価は医師によって様々です。
最近では、交通事故の自由診療でも、1点あたりの単価を12円程度(いわゆる日医基準に沿ったもの)としている医師も多い印象を受けますが、1点25円というような単価設定をしている医師もいるようです(日本臨床整形外科学会編『Q&Aハンドブック交通事故診療 新版』(平成24年7月15日・創耕舎)85頁によれば、「医療機関での自由診療の単価の現状は、1点20~25円です」とされいます)。
診療報酬単価が高いほど、治療費がどんどん積み重なっていくので、保険会社としても、早期の治療打切りをする動機になるのではないでしょうか。
また、不自然な通院をして治療費が高額化しているケースでも、保険会社が早期打切りを打診する動機となるでしょう。
保険会社や共済による違い
どこの共済だから、どこの保険会社だから、ということは特定はしませんが、やはり、支払いが渋い保険会社や共済はあるように思われます。
加害者の保険会社は選べませんので、こればかりは被害者のほうではどうにもならないでしょう。
なお、治療が不当に早く打ち切られたような場合には、健康保険を使う等して、いったん自費で通院することも検討して良いでしょう。