まとめると
・治療期間は症状固定時までが原則
・しかし、むち打ち・頚椎捻挫等の治療期間は人によってバラバラ
・症状が重いほうが長期の治療の必要性を立証しやすい(相手方保険会社としても、納得してくれやすい)と考えられるので、治療をきちんと続けていきたい場合には、MRI等の検査を受けておいてはいかがでしょうか(MRIは一例です。MRIで異常が確認できない場合も多々あります)
治療期間は症状固定時までが原則
交通事故でむち打ちや頚椎捻挫等と診断された場合、いつまで治療を続けるかについて、相手損保と争いになることがあります。
交通事故の被害者としては、痛みやしびれなどの症状がなくなるまで続けたい(完治するまで)と思われるのは、当然でしょう。
しかしながら、残念なことにむち打ちや頚椎捻挫等の痛みやしびれは、その全てが完治してしまうものではありません。
いくつかのケースでは、痛みやしびれといった症状が残ってしまうことがあります。
このような場合には、医師が治療を続けっていっても、これ以上よくも悪くもならない状態に達した段階(これを『症状固定』といいます)までしか治療費は支払われないのが原則です(例外的に症状固定後の治療費が認められるケースはありますが、むち打ち等のケースでは難しいでしょう)。
むち打ちや頚椎捻挫の治療期間はいつまで?(症状固定時)
交通事故の被害者のうち、むち打ちや頚椎捻挫・腰椎捻挫等と診断される方は多くいらっしゃいますが、治療期間は様々です。
相談をお受けしている印象としては、平均すると6か月程度ではないかと思われます(ざっくりと裁判例を見た印象としてもそれくらいではないかと思われます。保険会社としては、症状固定が事故後3か月と主張するケースも多いようですが)。
しかし、長い方であれば2年以上治療されている方、短いと1か月程度で治療を打ち切られてしまう方もいるようです。
それでは、このような治療期間の違いはどこからでてくるのでしょうか。
治療期間はどうしてこんなに大きく違うのか
この疑問に対して、残念ながら「これが答えです!」というような、明確な解答は容易しておりませんが、私の経験や裁判例をふまえると、以下のような要素で治療期間が左右されているように思われます。
保険会社の担当者による違い
相手方保険会社の担当者によって治療期間が変わるなんてバカな話があるか! と思われるかもしれません(法律論としてはその通りです。交通事故と相当因果関係のある治療費(損害)は、加害保険会社の担当者の属性によって左右されないのは当然です)。
しかしながら、交通事故の被害者のかたは、加害者が加入している保険会社が「そろそろ治療はやめて、後遺症の診断に移りませんか」と打切りを打診されるまでは治療を続けられる方が多いのではないでしょうか。
そうすると、相手方損保の担当者が、早期に治療の打切りを打診した場合には、治療は早期に終了し、とくに打切りの話をもちださないような場合には、治療も長く続けられるというのが実情ではないかと思われます。
症状の程度による違い
症状の程度が重ければ重いほど、治療が長引くのは当然といえるでしょう。
ここでいう症状の程度は、自覚症状も含まれていますが、それだけではありません。
交通事故の被害者Aさんは「首がすごく痛いです」と言っている場合と、交通事故の被害者Bさんが「首が非常に痛いです」と言っている場合に、どちらがどの程度症状が重いかというのは、判断できないでしょう。
相手方損保としても、自覚症状を訴えるだけではなかなか納得してくれないでしょう(もちろん、無意味ではありません。自覚症状があるからこそ治療を続けるのですから)。
症状の重さというのは、客観的な検査結果によって、ある程度の判別が可能です。
たとえば、交通事故のため、むち打ち・頚椎捻挫等と診断されたかたのうち、頸椎や腰椎の椎間板ヘルニアがMRIで確認されることがあります。また、神経根症状誘発テストで陽性が確認されたり、深部腱反射テストで異常な反応が出ることもあります。
このように、種々の検査を受け、異常が確認されているような方の場合には、検査では異常が何も確認できなかった方より症状が重いといえるでしょう(正確には、症状の重さを立証しやすいという意味ですが)。
そのため、治療の打切りを早期に打診されたような場合には、検査を受け、異常が出ているという結果を提示できれば、相手方損保としても治療の継続に納得してくれやすいのではないでしょうか。