弁護士の役割から考えてみよう
交通事故の被害者が弁護士に相談する、ベストのタイミングはいつでしょうか。
まずは、交通事故全体の流れから見ていきましょう。
交通事故の被害者は、一般的には、次のような流れをとるものと思われます。
(1)交通事故発生
↓
(2)病院で治療開始
↓(数か月後)
(3)治療終了
↓
(4)(後遺症がある場合)後遺障害の申請
↓
(5)示談
弁護士の果たす役割として、一番大きいと考えられるのは、やはり(5)示談の段階です。
慰謝料や逸失利益などの損害賠償金について、加害者もしくはその保険会社が裁判基準に従って支払ってくれるとは限りません。
弁護士が入って交渉したり、ADRを利用したり、はたまた訴訟をすることによって、慰謝料などが増額される可能性があります。
また、交通事故の慰謝料(入通院慰謝料)は、入通院の期間等に応じて計算されるので、(3)治療が終了しないと、いくらが妥当な慰謝料なのか計算が困難となります。
また、(3)治療が終了しないと、(4)後遺症が残るのかどうかは分かりませんし、残ってしまったとしても、後遺障害の等級が何級かによって、後遺症慰謝料などの金額も変わってきます。
そのため、(5)示談段階にならないと、今回の件では、損害賠償金としていくらが妥当か、お伝えすることは困難でしょう。
相談するタイミングは、できるだけ早く
それでは、弁護士に相談するタイミングとしては、(5)の示談段階がベストでしょうか。
いいえ、私はそう考えません。
むしろ、もっと早い段階、(さすがに事故にあったら弁護士よりも先に医者のところに行くべきですが)治療を開始して、弁護士のところに相談に行けるようになったら、できるだけ早く行ったほうが良いと考えます。
なぜ、早期の相談をおすすめするのか。
その理由は大きく分けて2つあります。
1.損害賠償金額は通院状況に応じて変化する
交通事故の慰謝料(入通院慰謝料)は、病院への通院状況によって左右されます。
たとえば、むち打ちで6か月間通院したとすると、傷害慰謝料は89万円が妥当でしょう(赤い本別表Ⅱで計算)。
しかしながら、無理をして、通院しなかったり、自己判断で途中で通院をやめてしまうと、慰謝料がこれより低くなるおそれがあります。
通院を打ち切った後で弁護士に相談して、入通院状況が慰謝料に影響すると知り、「もっと通院しておけばよかった」と後悔しても遅いです。
あまりに通院期間が空いてしまうと、相手方保険会社も、通院の必要性について争うでしょう。
2.適切な後遺障害の等級認定のために
交通事故のケガは、そのすべてが完治するわけではありません。
中には後遺症が残ってしまうようなケガもあります。
後遺症があるかどうか、あるとしてどういった内容なのかは、被害者のほうで立証していく必要があります。
入通院中に適切な検査を受けておくことで、後々の立証に役立てたり、また、適切な後遺障害の等級認定のため、(4)申請のお手伝いを弁護士ができることもあります。
後遺障害の等級認定がされるか否か、されるとして何級が認定されるかは、損害賠償金額に大きく影響を及ぼします。
早期の相談によって、適切な損害賠償金の受取りを
このように、弁護士が果たすべき役割としては、(5)示談段階が非常に大きいと考えられますが、相談するタイミングとしては、もっと早い段階のほうが理想的と言えます。
交通事故の被害にあってしまった場合、どのタイミングで弁護士に依頼するのが適切か悩むのであれば、そのことも含め、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。