交通事故の慰謝料について
交通事故の被害にあった場合、ケガ等をしていると、慰謝料の請求ができます。
慰謝料をいくら支払わなければならないか、ということは、法律では決まっていません。
慰謝料の金額は、裁判所が、様々な事情を考慮して判断するものです。
ただ、裁判官がいつも直感的に、えいや、と決めているかというと、そんなことはありません。
慰謝料にも相場があり、交通事故の慰謝料についてはほぼ定型化されています。
個別の案件によって増減することはもちろんあるのですが、いわゆる赤い本基準をもとに算定されるのが一般的です。
保険会社は、赤い本基準で慰謝料を支払うか
では、加害者の保険会社が、慰謝料をきちんと赤い本基準に則って支払うかというと、私の経験上、それは非常に少ないように思います。
弁護士に依頼しないで、自分で交渉した場合はもちろん、弁護士が代理人となって交渉しても、赤い本の満額の慰謝料を素直に支払う、というケースは少ないです。
保険会社が慰謝料を満額支払わない理由
保険会社側は、なぜ、このような対応をとるのでしょうか。
理由はいくつか考えられます。
たとえば、慰謝料の裁判基準は知ってるけど、それは裁判基準であり、交渉段階ではその金額は妥当ではない、という主張があります。
これは一見すると、もっともな理由のように見えます。
裁判所は、裁判になった場合にのみ、慰謝料の金額を判断します(訴訟をしない場合はいくら、というのは判決では書かれません)ので、訴訟をすることを、慰謝料の増額事由として見ているかは明らかではありません。
ただ、やはり、このような主張には、多大な疑問があると言わざるを得ません。
そもそも、裁判をせざるを得なくなったことによる精神的苦痛を慰謝料として算定するのであれば、物損やその他のあらゆる裁判でも、慰謝料が認められてしかるべきですが、物損では、通常、慰謝料は認められません。
訴訟をせざるを得なくされたことに対する制裁としては、むしろ、弁護士費用がそれにあたるでしょう。
保険会社が、慰謝料を満額(赤い本に基づいて)支払わない真の理由は定かではありませんが、私は、結局、足元を見られているのではないかと考えています。
訴訟をするとなると、労力を要しますし、弁護士費用特約を利用できなければ、弁護士費用がかかります。
こういった事情を見透かして、いわば泣き寝入りをせまっているのでしょう。
慰謝料を満額支払ってもらうにはどう対応すれば良いか
このような場合、保険会社に慰謝料を満額支払ってもらうには、どうすれば良いのでしょうか。
きちんと理屈立てて、説得すれば良いのでしょうか。
残念ながら、ほとんどのケースでそれは奏功しないでしょう。
なぜなら、保険会社は、『慰謝料を支払う理屈がわからないから払わない』のではなく、『わかっているけど、払わない』という態度であることが多いと思われるからです。
こうなってくると、理屈の戦いではありません。
強引に(とはいっても、強迫などはしてはいけません)、つまり、法的拘束力をかざして支払ってもらうしかないのではないでしょうか。
弁護士が出てくれば、訴訟を予測して、態度が軟化することも往々にしてありますし、交通事故紛争処理センターや訴訟など、拘束力をもつ手続を選択することによって、支払いを強制させることもできるでしょう。
保険会社から慰謝料を提示されたら、または、自分ではうまくいかない、と感じたら、まずは、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。