まとめると
・本判決は、MRI上の異常所見(腰椎椎間板ヘルニア)を非常に重視し、12級を認定した
・交通事故で、頚椎捻挫・腰椎捻挫等となった場合に、後遺障害の等級認定を狙う際は、MRIは受けておくのがおすすめ
今回の記事のソース
今回の記事は、東京地判平成12年3月14日交通民集33巻2号523頁を題材にした記事となります。
事案の概要
本件の被害者は、交通事故のため、頚椎捻挫・腰椎捻挫等の傷害を負いました(ほか、右眼についても傷害を負い、視力低下と視野狭窄で後遺障害の等級認定がされていますが、この点は、今回はふれません)。
自覚症状としては、首の痛み、腰の痛み、右上肢のしびれ、右下肢のしびれがあったようです。
検査結果としては、
・MRI上L4/5、L5/Sに椎間板ヘルニアが確認されている(頚椎捻挫に対応)。頚椎部分はなし。
・スパーリングテスト陰性。
・筋力低下や知覚異常なし。
・腱反射については、最初の病院では正常とされたが、その後に行った病院では、アキレス腱反射と膝蓋腱反射がやや低下とされた(ただし、相手方提出の医師の意見書によれば、腰神経根圧迫を示す腱反射低下は見いだせないとしている)。
というところです。
判決の概要
このような腰部の後遺障害に関して、裁判所は後遺障害等級12級に該当すると判断しました。
裁判所は、12級を認定する上で、以下のような理由をあげました。
・腰椎捻挫の症状は、時に、他覚的所見がなくとも、痛みなどの自覚症状が強い場合がある
・本件では、腰椎の椎間板ヘルニアが認められるから、知覚低下等の所見がなかったからといって、頸椎腰椎捻挫の傷害がなかったとは言えない
・腰椎椎間板ヘルニアが医学的に証明される(MRI画像上)
感想等
本裁判例は、MRI所見のみで、12級を認定したといって差し支えないのではないでしょうか。
交通事故による頚椎捻挫・腰椎捻挫の事例で、後遺障害等級12級を獲得する上で、MRI等で画像上の異常が確認されることが重要であることは、このサイトで何度か取り上げてきましたが、本判決もそのことを支える論拠の一つとなるでしょう。