紹介する判例
最判昭和49年7月19日民集28巻5号872頁
判例の概要
この判例は、小学1年生の女児が交通事故で死亡した事案です。
原審(最高裁の前に判断した裁判所)は、被害者である女児が、親の収入や学力から見て、高校進学が可能と判断し、この交通事故がなければ、高卒後就職したであろうと推定した上で、高卒後25歳まで就職し、25歳で結婚し離職しただろう、と推定し、高卒後25歳までの逸失利益を認めました。
このような判断は各種統計資料に基づくものでしたが、結婚した後の主婦としての逸失利益は認めませんでした(女性は結婚すれば離職して無収入になると判断)。
これに対して、最高裁は、以下のように述べて主婦の逸失利益を認めました(要約)。
主婦の家事労働は、本来、金銭的に評価されうるもの。他人に依頼すれば、お金がかかるような労働である。
現実に、家事労働に対して、対価が支払われないのは、夫婦の相互扶助義務の履行の一環としてなされ、また、家庭内という特殊な事情によるものに過ぎない。主婦の家事労働は、財産上の利益をあげているといえる(つまり、死亡したことにより、この利益は失われてしまったといえる)。
ただ、主婦の家事労働を金銭的に評価することも不可能ではないが、これを計算することは、困難を伴うことが少なくない。
そこで、専業主婦は、平均的労働不能年齢(原則として67歳)に達するまで、女性労働者の平均賃金に相当する財産上の利益をあげたものと推定するべき。
簡単なコメント
本判決は、主婦の逸失利益を認めた判例です。
専業主婦といえども、逸失利益を請求することはできます。
たとえば、平成24年度の女性の学歴系の平均賃金は、354万7200円とされています。
主婦の逸失利益を請求する際には、このような数字をもとに計算していくことが多いでしょう(兼業主婦の場合は、現実の収入があるので、現実の収入と比較して、多いほうをもとに請求)。