【事例の紹介】
本件では、被害者の方は、追突事故(平成20年10月4日発生)のため、頚椎捻挫(むち打ち)・腰椎捻挫等の被害を受けました。
被害者の方は、平成22年7月16日まで治療を受け、その後、後遺障害の等級申請を行いましたが、結果は、14級でした。
訴訟では、12級に相当することを主張したものの、裁判所も14級が相当と認定しました。
しかしながら、逸失利益につき、以下のように判示した点が注目に値します。
前提知識
むち打ち損傷のため、14級が認定された場合、逸失利益の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間につき、5年程度とされる例が多いです。
たとえば、本件では、被害者の方の基礎収入を348万9000円と認定していますが、348万9000円が基礎収入であれば、逸失利益は以下の通りになります。
3,489,000×0.05×4.3295=75万5281円
判決
労働能力喪失率を9%、労働能力喪失期間につき、10年としました。
すると、逸失利益は242万4691円となります。
5年の場合の比べて、166万9410円の増額となります。
労働能力喪失率や労働能力喪失期間を増加させた理由として、以下のようなものがあげられています。
・交通事故の衝撃の大きさ(自動車は全損となっている)
・事故のあと、しばらくの間、首から肩にかけて強い痛みがあり、立っていることも困難な状態だったこと
・その後も頭痛、吐き気を伴う痛みが持続していること
裁判所は、以上のような事情から、通常のむち打ちの場合に比して、一定の調整をするのが相当としました。
病院への通いすぎには注意
本件では、相手方は、平成21年12月29日までの治療費については認めていますが、その後の治療費については争っています。
裁判所も、この点は、相手方の主張を容れ、治療費は平成21年12月29日までの分しか認めていません。
むち打ちの場合には、通院をいつまでにするかは悩みどころですが、症状固定の時期は、最終的には裁判所が判断します。
病院にあまりに長期間通院しすぎると、治療費の自己負担が生じることがあるので、注意が必要です。