事例
判例(東京地判平成26年2月24日・自保ジャーナル1922号66頁)の紹介です。
本件での問題点はいくつかありますが、簡単に解説すると、以下のようになります。
被害者の方は、平成18年3月1日に交通事故の被害にあい、外傷性頭頸部症候群と診断されました(いわゆるむち打ち)。
その後、平成23年12月7日まで入通院をしました(入院26日間、実通院日数159日)。
自賠責の後遺障害等級認定は非該当。
被害者の方は、高次脳機能障害等を主張しましたが、裁判所は、これを認めず、平成19年2月28日で症状固定としました。
つまり、平成19年2月28日以降の治療関係費(計134万5038円)は、損害として認められず、被害者の方の自己負担となりました。
また、裁判所は、後遺障害の主張も認めませんでしたので、後遺障害慰謝料も後遺症による逸失利益も0円となりました。
休業損害に関する裁判所の判断
裁判所は、被害者の方を家事従事者として上で、休業損害を171万6250円としました。
(計算式)
343万2500円(平成18年の平均賃金センサスに基づいた、女性の平均賃金)×0.5=171万6250円
裁判所は、家事に影響が出た度合いを平均して50%としていますが、詳細な理由については述べていません。
主夫の休業損害として88万3256円を認めた裁判例では、後遺障害等級14級が認定されているものの、このパーセンテージは40%にとどまるものとされました。
後遺障害が認定されるかどうかというのは、休業損害の計算に影響を与えるものと考えられます(本判決も、判決理由中で、後遺障害がないことを理由にあげています)が、被害者の症状や症状固定までの期間も重視されているのではないかと考えられます。
主婦のような家事従事者の休業損害は、とくに増減の余地が大きい分野ではないかと考えられますので、簡単に示談してしまわないよう注意が必要です。