事例
判例(東京地判平成15年7月24日・判例タイムズ1135号184頁)の紹介です。
本件は、交通事故による死亡事故の事案です。
非常に痛ましい事件で、当時、マスメディアでも大きく報道された事件です。
加害者は、大型トラックを運転していたのですが、飲酒運転をしていました(呼気1リットル当たり0.63mg)。
高速道路に入る際、料金所の職員に注意されても無視し、サービスエリアでさらにウィスキー飲酒し、縁石にぶつけるなど、大きく蛇行しながら運転をしていたという悪質な事例です(裁判所は、これについて、「まさに走る凶器による危険極まりない運転行為が招いたもの」という表現をしています)。
加害者は、被害者の車両に衝突した結果、自動車が炎上し、被害車両に同乗していた3歳と1歳の姉妹が焼死したという事案です。
前提知識
子どもの死亡慰謝料は、おおむね、2000万円~2200万円とされています(赤い本基準)。
しかしながら、慰謝料というのは、個々の事情により増額がされるもので、本件判決も、個々の事情を考慮して、慰謝料を増額させました。
死亡慰謝料についての裁判所の判断
裁判所は、子ども1人あたり3400万円の死亡慰謝料を認めました。
これは、先ほどご紹介した赤い本基準の1.5倍以上の金額となります。
このような金額となった理由として、裁判所は、様々な理由をあげています。
(1)事故態様(飲酒の状況等)の悪質である上、事故後の対応からすると反省しているとは考え難いこと
(2)被害児童の死亡態様の悲惨さ
(3)目の前で、なすすべなく、子どもが焼死するのを見ているほかなかったという親の、想像を絶する痛恨の思いと無力感
(4)加害者の勤務先の会社の事故防止対策の不十分さ
などの理由です。
このように、交通事故慰謝料は赤い本基準が目安となりますが、個別の事情に応じて増減(減ることもあります)することがありますので、注意が必要といえるでしょう。
なお、本判決は、定期金賠償方式を採用している点でも注目された判例です。