事例
判例(大阪地判平成10年1月29日・交通民集31巻1号130頁)の紹介です。
本件の争点は、過失相殺や労働能力喪失率などいくつか存在しますが、ここでは、後遺障害等級にしぼって解説していきます。
被害者の方は、交通事故のため、頚椎捻挫等と診断されました。
画像診断としては、CTに異常は認められなかったものの、MRI検査では、C5/6、C6/7に椎間板ヘルニアが認められました。また、レントゲンで、C5/6に後方骨棘が確認されました。
神経学的検査結果としては、平成4年4月15日に実施されたスパーリングテストでは右にプラスが認められたものの、4月9日のスパーリングテストではマイナスでした。その他は、以下のとおりです。
ジャクソンテストも実施されたものの、いずれもマイナス。
上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射にも異常なしだが、右橈骨筋反射の低下が認められた。
ワルテンベルク反射はマイナス。
徒手筋力テストでは、テストを進行していくにつれて痛みが増強し、運動不可となること等があったため、テストの信頼性は不明との報告有。
自賠責の調査事務所では、これらの事情を考慮して、後遺障害等級としては、14級10号(現在の14級9号)に該当すると判断しました。
裁判所の判断
裁判所は、後遺障害等級としては、12級12号(現在の12級13号)に該当すると判断しました。
裁判所が12級に相当すると判断した理由は、以下のものがあげられています。
・椎間板ヘルニアが認められること
・両上肢の痛みとしびれは椎間板ヘルニアを原因とするものであること
・両上肢のしびれと痛みが長期にわたって持続していること
感想
本件では、神経学的検査では、あまり有意な所見はないようであり、裁判所も判決理由中で、神経学的検査結果にはふれていません。
MRIで椎間板ヘルニアが確認されたこと、ヘルニアになっている部位に対応する支配領域に自覚症状が出現していることが、12級認定の上で大きな要素を占めたのではないかと考えられます。
他の裁判例を見ても、MRIなどの画像上の異常は、後遺障害の等級認定にあたって、重要な位置をしめると考えられます(その割に、レントゲンは撮影したものの、MRIは撮影していないという方を散見します)ので、注意が必要でしょう。