【ご質問】
国保や健康保険等を利用して治療を受ける場合のデメリットについて教えてください。
【ご回答】
治療の幅が狭まる可能性と、医師が嫌がる可能性があることです。
※保険診療を受けるメリットの解説もご覧ください
(1)保険診療により、治療の幅が狭まる(デメリット1)
国保や健康保険を使って治療を受ける、保険診療は、健康保険法などの法律に基づいて使用できる薬剤の種類・量、リハビリの回数などに制約があります。
これに対して、交通事故の被害者は、健康保険を使わずに治療を受けることもできます。
これを自由診療といいます。
自由診療は、健康保険を使わずに治療を受けるので、保険診療の制約なしに自由に治療をすることができます。
したがって、保険診療の場合には、自由診療の場合と比べて、治療の幅の選択肢が狭まることがデメリットの第一にあげられます。
こう書くと、「治療の幅が狭まる保険診療なんてとんでもない。ちょっと高くついても、自分の身体を直すことが第一だ。何の制限もない自由診療を受けたい」と考えられる方もいるでしょう。
しかしながら、「交通事故による受傷で,自由診療でなければできない治療はほとんどないといわれている」(北河隆之『交通事故損害賠償法』平成23年4月15日・弘文堂・101頁)とする文献もあります。
保険診療、自由診療といったイメージにとらわれるのではなく、健康保険を利用するメリット・デメリットを踏まえ、実際に自分がどうすべきか、選択することが肝要です。
なお、当事務所では、保険診療にすべきか、自由診療にすべきか、というご相談についても無料でお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
(2)保険診療により、医師が嫌がる可能性がある(デメリット2)
自由診療にすると、治療をする医師の側に、実はメリットがあります。
健康保険等を利用する保険診療の場合、治療に対する1点あたりの単価が10円とされています。
これに対して、自由診療の場合には、1点10円という縛りはありませんので、医師と患者の話し合いにより、自由に単価を決定することができます。
自由診療の場合には、概ね、1点15円~20円程度としている医師が多いと思われます。
つまり、自由診療にするか、保険診療にするかで、医師の報酬が倍も変わってくる可能性があるのです。
交通事故の治療費は、ケガの程度にもよりますが、100万円を超える事例もまれではありません。
医師としても、自分の報酬が50万円になるか、100万円になるかといわれると、関心が大きい方もいるでしょう。
そのため、保険診療に抵抗感を示す医師もいるでしょう。
交通事故の問題では、臨床医の協力(鑑定や意見書だけではなく、医師に医学的な知見からの解説を求める等)が必要な事案もありますので、いたずらに医師との関係を悪化させるのも、あまり望ましくはありません。
治療の幅の問題やメリットの見極めも必要ですので、迷ったら、弁護士に相談することもご検討ください。