【ご質問】
自賠責基準の計算では、自賠責保険の金額以下になります。限度額まで払ってもらう方法はありませんか
【ご回答】
裁判基準で計算することにより、増額される可能性があります。
自賠責保険は、通常、支払基準の範囲内でしか保険金を支払いませんが、自賠社を相手に訴訟をすることにより、支払基準を超えて支払われる可能性があります(ただし、限度額の範囲内)。
裁判所は、自賠責の支払基準に拘束されない
自賠責保険の支払基準は、自賠社によってバラバラというものではありません。
「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年12月21日金融庁・国土交通省告示第1号)に基づいて支払われます。
自賠責保険の会社は、この基準に拘束されているためです(自賠法16条の3)。
しかしながら、これは保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎません。
裁判所は、この自賠法16条の3第1項が定める支払基準によることなく、独自に損害賠償額を算定して、支払いを命じることができます(最判平成18年3月30日・民集60巻3号1242頁)。
もっとも、計算方法に縛られないというだけで、さすがに限度額を超えることはできませんので注意してください。
誰にメリットがあるか
といっても、交通事故の加害者は、任意保険に加入しているのが一般的です。
加害者が任意保険に加入さえしていれば、自賠責基準に関係なく、加害者の保険会社に対して、裁判基準に基づいた損害賠償請求をすれば足ります。
自賠責保険の会社に損害賠償請求をして、それが裁判基準で認容されても、結局は限度額という上限を設けられてしまう以上、最初から任意保険の会社を訴えたほうが良いといえます。
しかしながら、交通事故の加害者が任意保険に加入していない場合には、話は別です。
任意保険に加入していない理由としては、お金がないから保険に加入していないだけ、というのが多いでしょう。
このような場合には、加害者を訴えてもお金を回収できるかわからない(むしろ、回収できない場合のほうが多いでしょう)ので、支払が確実な自賠責からできるだけ多く保険金をもらう必要があるのです。
このように、加害者が任意保険に加入しておらず、かつ、自賠責基準では限度額に満たない場合には、自賠責保険の会社に対する訴訟を検討すべきでしょう。