【ご質問】
交通事故のむち打ちを原因とする、バレー・リュー症候群について教えてください
【ご回答】
バレー・リュー症候群とは、「椎骨神経(頚部交感神経)の刺激状態によって生じ、頭痛、めまい、耳鳴、視障害、かすれ声、首の違和感、摩擦音、易疲労性、血圧低下などの自覚症状を主体とするもの」と定義されています(栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題 第二版』28頁)。
ただし、その発生原因については不明な点が多く、心因性の影響も指摘されるところです。
そのため、後遺障害の等級認定にあたっても、困難を伴うことがあります。
なぜ、バレー・リュー症候群という名称なのか
フランスの神経学者である『バレー』が1925年にこのような症状を後部頸交感神経症候群として発表し、その後、1928年にバレーの門下生である『リュー』が、さらに症例を集めてまとめたためです。
単に発表者の名前がつけられているだけです。
バレー・リュー症候群の症状
バレー・リュー症候群の症状としては、頭痛やめまい、耳鳴、視障害、かすれ声、首の違和感、摩擦音、易疲労性、血圧低下などの不定愁訴となります(バレー・リュー症候群だからこのような症状が生じるというより、むしろ、このような不定愁訴の総称として、バレー・リュー症候群という傷病名が使用されているように思われます)。
症状の特徴としては、
・頭痛:後頭部に最も強い痛みを感じる
・めまい:頭を回転した瞬間に突然生じるもの。前庭器官の障害による症状を伴わないのが通常
・視障害:客観的な視力低下が認められず、眼科で診察を受けると、眼精疲労が原因ではないかと指摘されることが多い
といったものがあげられます(遠藤健司『むち打ち損傷ハンドブック第2版』64頁参照)。
バレー・リュー症候群の原因
なぜ、このような症状が発生するのか、そのメカニズムについては、いまだ定説は確立されていません。
バレーは、頚部交感神経の過緊張をあげていますが、ほかに、脳幹障害が原因とするものや、末梢前庭・内耳障害説などもあります。
このことが、後述するように、後遺障害の等級認定にあたって、大きな問題となっています。
後遺障害等級認定上の問題
むち打ちで認定されうる等級は、一般的12級13号もしくは14級9号です。
区別としては、医学的に証明可能なものが12級、医学的な説明が可能であるもの14級となると考えられます。
しかしながら、バレー・リュー症候群は、その発生メカニズムについて未だに不明な上、心因性の影響も指摘されることがあるため、医学的な証明は非常に困難といえます。
そのため、後遺障害等級としては、12級の認定は困難ではないかと考えられます(弁護士の経験上も、バレー・リュー症候群で12級を獲得できたケースはありません)。