【ご質問】
むち打ち損傷の分類について教えてください
【ご回答】
分類としては、比較的有名な、1968年に横浜市立大学整形外科教室の土屋弘吉氏らが発表した、いわゆる「土屋の分類」がわかりやすいかと思われますので、こちらを紹介します。
ただし、近年問題になっている、胸郭出口症候群や脳脊髄液減少症については、土屋の分類ではふれらていないので、これらも見逃さないよう注意が必要です。
むち打ち損傷の分類について
一口にむち打ち損傷といっても、その原因はいくつも考えられます。
たとえば、椎間板ヘルニアなど、頚椎の神経根由来と考えられるもの、自律神経系の異常、胸郭出口症候群など、様々な病態が考えられます。
ですので、まずは、これらの病態について分類し、それぞれの病態にあった治療を受け、後遺障害の等級認定を狙う際にも、病態に沿った検査を受けていくことが肝要です。
ここでは、むち打ち損傷で有名な、「土屋の分類」を中心にふれていきます。
むち打ち損傷に関する、土屋の分類
土屋の分類は、以下のようなものになります。
(1)頚椎捻挫型
(2)根症状型
(3)バレー・リュー症状型
(4)根症状+バレー・リュー症状型
(5)せき髄症状型
頚椎捻挫型
頚部や項部の筋繊維、前後縦靭帯、椎間関節包、椎弓間靭帯、棘間靭帯などの過度の伸長や部分的断裂などを含む段階です。
症状としては、首やその周辺部分の痛み、首を動かした際の痛みなどが主で、手や腕のしびれなどの神経症状は認められないか、あっても一過性のものが中心となります。
予後は良好とされています。
根症状型
神経根症状が明らかなものです。
症状としては、頚椎捻挫型の症状+腕の痛みやしびれなどの知覚障害・痛みがあります。
神経学的テストの結果、反射の異常や筋力低下、神経根症状誘発テスト陽性となることがあるのが特徴です。
MRIを撮影すると、頚椎椎間板ヘルニアなどになっていることがあります。
根症状型は、後遺障害等級としては、12級を狙える場合もありますので、後遺障害の申請にあたっては注意が必要です。
バレー・リュー症状型
症状としては、頭痛、めまい、吐き気、視力低下、聴力低下・めまいなどの不定症状を呈するものです。
自律神経系の異常が原因ではないかと考えられますが、定説は確立されておらず、明確なEBM(根拠に基づいた医療)は存在しないとされており、治療にあたっても、厄介な問題が横たわっています。
また、心因性の影響も考えられるのが、さらに、問題を複雑化させています。
根症状+バレー・リュー症状型
文字通り、上記の神経根症状に加えて、バレー・リュー症状が出ているものです。
せき髄症状型
非骨傷性のせき髄損傷ですので、これは、もはやむち打ち損傷の範囲にとどまりません。
病的反射が出現しているなどの特徴があります。
胸郭出口症候群
腕神経叢や鎖骨下動静脈の圧迫・牽引が原因と考えられる病態です。
土屋の分類では触れられていませんが、近年このような病態が報告されています。
症状としては、腕から手にかけてのしびれや痛み、首や肩のこりが考えられます。
くわしくは、胸郭出口症候群の解説記事をご覧ください。
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
脳脊髄液が漏れ出るもので、さまざまな脳、脳幹、脊髄刺激症状が発生します。
発生機序について不明な点が多く、損害賠償請求の際にも問題になりやすい分野です。