【ご質問】
頚椎捻挫(もしくは腰椎捻挫)となりましたが、病院(整形外科)に通うべきですか、それとも整骨院や接骨院に通うべきですか
【ご回答】
後々の示談を見据えた場合には、整形外科への定期的な通院をおすすめします。
治療費(施術費)が認められないリスク
整骨院や接骨院に通院することについては、リスクがあります。
第一のリスクとしては、治療費(正確には施術費)が認められないリスクがあげられます。
自賠責保険の支払基準では、施術費用は、必要かつ妥当な実費が治療関係費として支払われるとされています。
自賠責基準を見ると、「整骨院等の施術でも問題ないじゃん」と考えそうですが、そもそも、最終的に、何が損害として、何が損害として認められないかは、裁判所が判断することです。
弁護士は、通常、このような裁判所の判断を見据えて交渉を進めますが、裁判所は、医師による治療と整骨院や接骨院での施術とを分けて考える傾向にあります。
治療費についても問題となることは時折ありますが(治療の期間や治療の単価など)、その治療方法は、科学的に説明可能です。裁判所としても、一般的に、ケガをした以上は、治療費を損害として認めてくれる傾向があります。
これに対して、そもそも、東洋医学に対する施術については、施術効果が科学的に説明できないため、本当に必要なのかという疑問が入り込む余地があります。
そのため、整骨院や接骨院での施術費が裁判所に認められるためには、施術の必要性・有効性が認められ、施術内容が合理的で、しかも、施術の期間も費用も相当であることが要件と考えられています(『交通事故による損害賠償の諸問題Ⅲ』195頁参照)。
このように、整骨院や接骨院での施術を受けることにはリスクがありますので、整形外科への通院をおすすめします(東洋医学による施術で良くなったという声もよく聞きますので、あまり抑制するのはどうかとも個人的には思いますが、裁判例を踏まえると、やはり、損害賠償面でのリスクは否定できません)。
後遺障害の認定の際のリスク
頚椎捻挫等になり、痛みやしびれが残ってしまった場合には、後遺障害として認定される可能性があります。
後遺症などと言うと、悪いイメージを持たれるかもしれませんが、交通事故での後遺症認定は、後遺症慰謝料など、単にお金がもらえるだけと考えたほうがよろしいでしょう。
痛みやしびれは、自覚症状であり、これを明確に証明するような検査方法はありません。
そのため、後遺障害診断書などをもって、痛みやしびれが残ってしまっていることを証明していく必要がありますが、後遺障害診断書を書けるのは医師だけです。整骨院や接骨院の先生は、医師ではないので書けません。
そうすると、整形外科にきちんと通院していないと、「自分は治療経過を見ていないのでよくわからない」などと言われてしまうリスクがあります。
また、整形外科にどれくらいのペースで通っていたか、ということは、後遺障害について判断をする側の人にもわかってしまいます。
すると、通院日数が少ないと、「まともに治療を受けていないから痛みやしびれが残っただけではないか」との疑いを抱かせるリスクがあります。
このようなリスクを避けるためにも、整形外科等の病院へ、定期的に通院することをおすすめします。