【ご質問】
むち打ちや頚椎捻挫の後遺障害等級認定にあたって、PETやSPECTは重要ですか?
【ご回答】
脳代謝の低下が観測できた場合には、補助的な資料として有用ではないかと考えられます。
ただ、PETやSPECTは、その時の脳の活動状況を示すものなので、有用性は低いと考えられます。
PETとは
ポジトロンエミッション断層撮影法(Positron Emission Tomography)と呼ばれる検査方法です。
陽電子(ポジトロン)を放出する薬剤を用いて、断層画像を撮影する検査方法です。
SPECTとは
単一光子放射線型断層撮影法(Single Photo Emission Computed Tmography)と呼ばれる検査方法です。
ガンマ線を放出する薬剤を用いて、ガンマ線の分布を断層画像で撮影する検査方法です。
PETに比べ、サイクロトロンなどの設備が必要ないため、PETに比べれば行いやすい検査ですが、ガンマ線は体内に吸収されやすいので、PETに比べて画像が不鮮明になりやすいという欠点もあります。
PETやSPECTにより、何がわかるか
PETやSPECTにより、脳の代謝量や血液流量を撮影できます。
むち打ち損傷の患者の中には、頭頂部や後頭部の脳代謝が低下することが考えられます。これは、上位頸髄からの侵害刺激を伝える上行性神経の活動によるものと推察されています(遠藤健司『むち打ち損傷ハンドブック第2版』108頁参照)。
PETやSPECTは有用か
このように、むち打ちにより、脳代謝が低下することがあります。
脳代謝量が低下していることが観察できれば、それをもって、神経症状が生じていることも医学的な証明(後遺障害等級12級)が可能なのではないかとも思われます。
しかしながら、脳の代謝量というのは、むち打ちが原因で低下するものではありません。
うつ病等の心因的な要因によっても、減少することがありますので、有用性はそれほど高くないのではないかと考えられます。
文献(栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題 第二版』57頁)でも、「むち打ち損傷の病態解明についていの有用性については議論があり、今後の検討課題である」などとされています。
しかしながら、医学的な証明とまではいかなくとも、説明(後遺障害等級14級)をするにあたっては、有用な資料として用いることができるのはないかと考えられます。
MRIでも異常が見つからなかったような場合に、頭痛などの症状がある場合には、PETやSPECTで断層画像を撮影することが考えられます(もっとも、費用対効果は慎重に見極める必要がありますが)。