【ご質問】
交通事故を原因とする、むち打ちによる頚椎椎間板ヘルニアについて教えてください
【ご回答】
交通事故のため、むち打ちになると、腕や手の指などに痛みやしびれが生じることがあります。
このような症状の原因の一つとして、頚椎椎間板ヘルニアになっていることが考えられます。
詳細は以下のとおりですが、椎間板ヘルニアとなっている場合には、自賠責の後遺障害等級12級が獲得できる場合もありますので、神経学的テストを受けるなどして、後遺障害を立証できるよう注意が必要です。
椎間板ヘルニアとは
椎体と椎体との間には、椎間板と呼ばれる領域があります。
簡単にいうと、背骨はいくつもの骨からなりたってますが、この骨と骨との間にあるクッションのようなものです。
この椎間板は、髄核というゼラチン状の部分と、それを丸く覆う繊維輪という部分から成り立っています。
通常は、髄核は、繊維輪に覆われているのですが、交通事故による衝撃のため、繊維輪が断裂して、髄核の一部が飛び出てしまうことがあります。
そして、飛び出た髄核が神経根を圧迫して、様々な神経根症状を引き起こすのです(まれに、脊髄を圧迫することもあります)。
これが椎間板ヘルニアです。
椎間板ヘルニアの症状
頚椎椎間板ヘルニアによる、神経根の圧迫症状としては、以下のようなものが考えられます。
神経根の支配領域に対応する部分(腕や指)の疼痛、しびれなどの感覚障害、筋力の低下、腱反射の低下などがあります。
通常は、片方の神経根のみが圧迫されますので、腕や手などのしびれや痛みは、右と左の両方に生じるわけではなく、片方のみに生じるという特徴があります。
椎間板ヘルニアの検査方法(MRI)
椎間板ヘルニアか否かは、MRI写真を撮影するのが最も有効と考えられます。
椎間板ヘルニアは、レントゲンやCTでは映らないので注意してください。
レントゲンでは異常が見つからなかったものの、MRIを撮影したところ、異常が見つかるということも稀ではありません。
頚椎椎間板ヘルニアは、C5/6、C6/7頚椎間に発症することが多いと言われています。
また、MRIで異常が見つかった場合には、後遺障害の等級認定にあたって非常に説得力が生まれます。
「椎間板ヘルニアになっていることは、この画像からも明らかです。椎間板ヘルニアになれば、指のしびれなどがでることも明らかでしょう」というような主張は説得力があります。
もっとも、MRI上は、無症候性の椎間板ヘルニアも存在しますので、その点も留意が必要です。
このほか、古いMRIでは映らなかった異常が、新しいMRI機器を用いることにより確認されるということもありますので、この点も気を付けておくべきでしょう。
神経根症状の検査(後遺障害の認定のために)
後遺障害の等級認定のためには、医学的な立証(12級)または説明可能なこと(14級)が必要です。
頚椎椎間板ヘルニアによるものと思われる、神経根症状(腕や指の痛み、しびれなど)が出ている場合には、MRIのほか、以下のような神経学的テストなどをしていくことが考えられます。
神経学的テストなどの結果、異常が見つかった場合には、これも痛みやしびれなどを根拠づける重要な資料となり得るでしょう。
・神経根症状誘発テスト(スパーリングテスト、ジャクソンテスト)
12級を獲得するためには
椎間板ヘルニアとなっている場合に、12級を獲得するためには、まずは、MRI写真で異常が確認されることが重要と考えられます。
画像は動かぬ証拠となりますので、強力な証明力を有するものと考えられます。
もっとも、MRIでヘルニアになっていることが確認されても、それだけ異常がでていると断定まではできないでしょう。
そのため、神経根症状の誘発テスト、腱反射テストなどを行って、MRIで異常が確認されている部分の神経根に対応する領域に、異常が確認されるとさらに説得力が増すと考えられます。
後遺障害の申請の際には、適切な等級認定がされるためには、適切な治療と検査を受けることが肝要と考えられます。