加害者に対して請求できるもの
将来介護費(将来の付添看護費)
交通事故の後遺症は、時として、すさまじいものがあります。
今後、誰かの介護なくしては日常生活すら送れないような後遺症もあります。
このような場合には、これからかかる介護費用(将来介護費)の請求が考えられます。
将来介護費が認められる場合
将来介護費は、医師の指示または症状の程度により必要性が認められる場合に請求可能です。
具体的に、将来介護費が認められるケースとしては、
・遷延性意識障害(いわゆる植物人間状態)
・高次脳機能障害
・脊髄損傷
が考えられます。
もちろん、高次脳機能障害や脊髄損傷があったからといって、当然に将来介護費が認められるものではありません。
反対に、遷延性意識障害・高次脳機能障害・せき髄損傷のいずれにも該当しないが、将来介護費が認められるケースもあります。
症状の程度によって、介護の必要性を立証していくことになるでしょう。
将来介護費の金額
金額は、赤い本によれば1日8000円とされています。
もちろん、症状の程度によって必要な介護も変わってくるでしょうから、増減される可能性があるので注意が必要です。
1日8000円だとして、いつまでもらえるのかについても問題になりますが、これは平均余命を基準とすることになるでしょう。
たとえば、平成24年平均余命のデータによると、30歳男性の平均余命は、50.69年ですので、あと50年生きると仮定して、それまでの介護費用を請求していくことになるでしょう。
このほか、職業付添人に介護を依頼する場合には、1日8000円ではなく、実費全額を請求していくこととなるでしょう。
豆知識~ライプニッツ係数~
将来介護費は将来発生するお金です。
これを一括請求する場合には、いわば将来支払う必要のあるお金をすぐに支払うよう請求することとなります。
すると、相手方(加害者もしくはその保険会社)としては、「何で将来支払うべきお金を今支払わなきゃいけないんだ。それだけのお金が手元にあれば、それを銀行に預けておけばお金を増やせるのに」、と主張するでしょう。
これはもっともな主張ですので、たとえば、平均余命50年の場合には、
8000円×365日×50年分=1億4600万円
を介護費用として請求するのではなく、利息の分を差し引く必要があります。
これを計算する際には、ライプニッツ係数という数字を使うことになります。
8000円×365日×18.2559(50年に相当するライプニッツ係数)=5330万7228円
計算するとこのようになります。
定期金賠償方式について
このように、ライプニッツ係数を用いて計算すると、もらえるお金の総額はかなり低くなるように見えます。
なぜなら、ライプニッツ係数は、実は、利息5%を前提として、その利息分を差し引いているのです。
超低金利時代の現代では、銀行にお金を預けていても、5%もの利息なんてまずつかないでしょうから、損となる可能性があります。
そこで、定期金賠償方式という方法で賠償してもらうことが考えられます。
これは、将来介護費について、将来の分まで一括して支払ってもらうのではなく、きちんと定期的に支払ってもらう方法です。
これを用いれば、利息分を差し引かなくてすみます。
このように解説すると、定期金賠償方式は非常に魅力的な賠償方式に見えます。
しかしながら、定期金賠償方式にはデメリットもあるので、安易に選択しないよう注意が必要です。
余命が争われる可能性について
余命を認定するには、平均余命が大きな役割を果たすのが一般的です。
しかしながら、保険会社はこの点について、争ってくる可能性があります。
遷延性意識障害(いわゆる植物人間状態)の患者は、他の人と比べて平均余命が短いなどと、自身に有利なデータをあげて短くするように争ってきたりしますので注意が必要です。
保険会社からの提示に疑問を感じたら、弁護士への相談を検討されてはいかがでしょうか。
アウル東京法律事務所では、交通事故被害に関する相談は無料で承っております。