加害者に対して請求できるもの
その他の物損(交通事故の物損に関する解説)
交通事故の被害者は、身に着けている物や所持品などを失うことがあります。
このような物損に関しても請求可能と考えられますので、いくつか、解説していきます。
賠償されるのは事故当時の時価
一般に勘違いしやすいこととしては、交通事故の物損で請求できるのは、購入金額ではなく、その物の時価ということです。
たとえば、半年前に10万円で購入した洋服が交通事故のため、破れて使えなくなったからと言って、10万円を請求できるわけではありません。
服は着れば着るほど劣化していきます。
10万円で購入したとしても、半年後にはかなり価値が落ちているでしょう。
それでは、いくら賠償されるべきかというと、これはまた難しい問題があります。
自動車であれば、中古車市場が発達していますので、同種の自動車を購入しようとするといくらになるのか、というのは比較的容易に調べることができる、といえます。
これに対して、それ以外の物であれば、中古市場がほとんどなく、同種の物を再調達することすら困難ということがままあります。
(新品であればいくらでも売っていても、同じくらいの中古品というのは、そもそも売られているかどうかすらあやしいと言えます)
立証方法としては、購入価格と税法の減価償却期間を組み合わせて算出することと等が考えられますが、実際には、詳細な認定まではされず、購入金額や購入時期、使用状態等を考慮した上で、裁判官が「えいや」で決めてしまうことが多いように思われます。
商品についても損害賠償請求可能
壊れたものが売り物であれば、商品についても損害賠償請求が可能と考えられます。
注目に値する裁判例として、大阪地判平成20年5月14日・交民41・3・593頁があります。
この裁判例は、筆ペンを収載していたトラックが衝突事故にあった事案です。
外観的に壊れていることが明らかな筆ペンのみならず、車両が横転等したという事故状況を踏まえ、外観に異常が認められない筆ペンも、内部構造に不具合が生じている可能性が払しょくできず、商品価値は毀損されていると認定されました。