加害者に対して請求できるもの
自動車の修理費(交通事故の物損に関する解説)
自動車に乗車している最中に衝突されると、自動車が故障することがあるでしょう。
また、自動車に乗っていないとき(たとえば、駐車中)でも、突然、他の自動車が突っ込んで来たら、自動車が故障してしまうことがあるでしょう。
(ここでの故障は、エンジン等の内部機関だけでなく、塗装がはがれたりすることも含みます)
このような場合には、被害者は加害者に対して自動車の修理費を請求することが考えられます。
修理をしてしまう前に、全損かどうかに注意
自動車が修理可能であれば、修理費は当然支払われると思いがちです。
残念ながら、そうとは限りません。
経済的全損といって、修理は可能だが、修理をするよりも同じような自動車を買ったほうが安くつく、という場合があります。
つまり、修理費>買替費用
このような場合には、修理費は認められません。
詳しくは、買替差額についての解説ページをご参照ください。
修理費と認められる範囲
修理費が認められる場合でも、必要な範囲でしか認められないことには注意が必要です。
より経済的な修理方法があればそれによるべきで、過大な修理費までは認められません。
たとえば、塗装をする場合でも全塗装は通常認められません。
部分塗装が可能な場合には、部分塗装の費用しか認められませんので注意が必要です。
修理をしない場合でも修理費は請求できる
修理費は、修理を実際にしないと認められない、というものではありません。
自動車が故障した以上は、修理費は損害として請求可能です。
仮に、今のところ修理する気がないとしても、請求可能です(大阪地判平成10年2月24日・自保ジ1261・2頁参照)。
自動車ローンを完済していない場合の修理費
自動車ローンを完済していなかったり、リース中の車両でも、ローン会社(もしくはディーラー)やリース会社が修理費を請求するのではなく、自動車を実際に使用しているユーザーが請求することとなります。
これらの場合、車検証の所有者名義は『リース会社』や『ローン会社』になっているでしょうが、リースについては修理や保守がユーザーの義務であることから、ローンについては、このような所有権留保は担保目的に過ぎず、実質的な所有権は買主に帰属することから、自動車の修理費もユーザー(買主)に帰属することとなります。
(リースについては東京地判平成21年12月25日・自保ジ1826・39頁、ローンについては京都地判平成24年3月19日・自保ジ1883・133頁参照)
評価損(格落ち損)に注意
自動車の修理が相当な場合、自動車の年式等によっては、評価損の請求も考えられますので注意が必要です。
詳しくは、自動車の評価損(格落ち損)の解説ページをご覧ください。