加害者に対して請求できるもの
自動車の買替差額(交通事故の物損に関する解説)
全損(物理的全損や経済的全損)
交通事故被害にあい、自動車が故障した場合には、原則として修理をすべきで、損害賠償の範囲も修理費までとなります。
(詳しくは、自動車修理費の解説ページをご覧ください)
しかしながら、自動車の修理が物理的に不可能な場合があります(物理的全損)。
また、修理は可能と言えば可能だが、同じような自動車に買い替えたほうが安くすむ場合があります。
これを経済的全損といいます。
このほか、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷を受けて、その買替えをすることが社会通念上相当と認められる場合もあります(社会的全損)。
これら3つのケースの場合には、もはや修理をするのは適当ではありません。
そのため、損害賠償の金額も、後ほど解説する買替差額にとどまることになります。
買替差額の解説
買替差額とは、交通事故が発生した当時の被害自動車の時価相当額と売却代金との差額を意味します。
このように解説すると、いささか混乱するかもしれません。
事故当時の自動車の時価相当額で十分じゃないの? なんで売却代金を差し引くの? 売却代金って何の売却代金? と疑問がつきないでしょう。
売却代金というのは、事故後の自動車を売却する場合の代金です。
(もちろん、修理をする前の状態で売る)
事故車といえども、ある程度価値がつく場合があります。
また、スクラップとして売却することも考えられるでしょう。
このように、自動車の買替えをすると、事故車といえども、売ることで利益を得られることがあるので、その分を差し引くという程度の意味です。
事故当時における価格に注意
買替差額の対象となるのは、交通事故が発生した当時の被害自動車の時価です。
買替差額と言っても、新車を購入する費用まで出してくれるというわけではないので、注意が必要です。
正確には、事故にあった自動車と同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するために必要な価額を意味します(最判昭和49年4月15日・民集28・3・385頁)。
具体的にどうやって調べるかというと、「自動車価格月報」(通称レッドブック)や「中古車価格ガイドブック」(通称イエローブック)を参照することが多いでしょう。
経済的全損についての補足
先ほど、経済的全損とは、同じような自動車に買い替えたほうが安くすむ場合だと解説しました。
でも、自動車を買い替える場合には、何もその自動車の車体だけを購入してすむわけがありません。
新たに車庫証明を取得したり、といった費用がかかります。
このような費用も損害賠償の対象となります(詳しくは、登録手続関係費の解説ページをご覧ください)。
経済的全損か否かを判断するには、
修理費>自動車の時価+買替諸費用
か否かに注意しなくてはいけません。