障害が残った部位に応じた後遺障害
上肢の欠損障害(交通事故に伴う後遺障害の解説)
1.認定されうる後遺障害等級
1級3号:両上肢をひじ関節以上で失ったもの
2級3号:両上肢を手関節以上で失ったもの
4級4号:1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号:1上肢を手関節以上で失ったもの
※指の欠損については、手指の欠損障害の項目で取り扱います。
2.上肢をひじ関節以上で失ったものとは
右腕か左腕、どちらかの腕について、『ひじ関節以上で失ったもの』と認定されれば、後遺障害等級としては、1級(両腕の場合)もしくは4級(片腕の場合)が認定されます。
『上肢をひじ関節以上で失ったもの』とは、以下のいずれかに該当する場合をさします。
(1)肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
※肩関節のところで、腕が切断されているような場合です。
(2)肩関節とひじ関節との間において、上肢を切断したもの
(3)ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの
※ひじ関節のところで、腕が切断されているような場合です。
3.上肢をひじ関節以上で失ったものとは
両上肢につき、『ひじ関節以上で失ったもの』と認定されれば、2級が、1上肢につき、『ひじ関節以上で失ったもの』と認定されれば、5級が認定されます。
そして、『上肢をひじ関節以上で失ったもの』とは、以下のいずれかに該当する場合をさします。
(1)ひじ関節と手関節の間において、上肢を切断したもの
※ひじ関節のところで切断されているような場合には、『ひじ関節以上で失ったもの』に該当し、より上位の等級の認定可能性があります。
(2)手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの
※手首の関節のところで、切断されているような場合です。
4.後遺障害の等級認定について
上肢の欠損障害がある場合には、後遺障害の等級認定が問題になることはあまりないでしょう。
なぜなら、欠損があるか否か、あるとしてどの部分なのかは見ればわかるものであるためです。
5.逸失利益にご注意
認定された後遺障害等級が1級~3級の場合は、自賠責の労働能力喪失率は100%になります。
そして、4級であれば92%、5級の場合には79%となります。
両上肢を失ってしまったような場合には、労働は困難といえるでしょう。
これに対し、一上肢のみを失ってしまったような場合には、本人の努力によって、ある程度の収入を維持しているような事例もあります(たとえば、片手でパソコンのキーボードが打てるように訓練する等して)。
このような場合、相手方保険会社は、労働能力喪失率を争ってくる可能性があります。
実際に、自賠責の労働能力喪失率よりも低い喪失率を認定した裁判例もありますが、裁判所は、現実の収入割合にとらわれることなく、今後のさらなる減収の可能性、職を失う可能性、再就職の際の制約等を考慮しているものが多いといえます。
そのため、逸失利益について争われても、現実に収入が減っていないからといって、それで諦めるのではなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。