交通事故の被害者の中には、むち打ちや頚椎捻挫と診断される方が多くいらっしゃいます。
急性期(事故直後)には、首の痛み(頸部痛)を訴える方が多いのではないでしょうか(もっとも、むち打ちの場合、事故直後には痛みがないが、数時間後や、場合によっては翌日になって痛みが出てくるという方も多くいるでしょう)。
むち打ち・頚椎捻挫による痛みやしびれ等の症状は、このような急性期症状だけでなく、何か月も持続することがあります。
ここでは、むち打ちの慢性期症状についてまとめています。
頸部痛
首の痛みのことです。
むち打ち患者の中では、最も多く見られる症状です。
詳細については、むち打ちによる頸部痛の解説記事がありますので、ご覧ください。
頭痛
頭痛は、首の痛みに次いで多く見られる症状です。
頭痛が生じる原因の一つとして、頸部にあるC2神経根の障害が考えられます。
詳細については、むち打ちによる頭痛の解説記事をご参照ください。
上肢の痛みやしびれ
むち打ち患者のうち、上肢(腕や手)の痛み・しびれを訴える方が比較的多くいらっしゃいます。
原因の一つとして、神経根症状が考えられます。
すなわち、頚椎には、神経根という部位があり、それぞれの部位に対応する支配領域があります。
たとえば、C5という部分は上腕二頭筋が支配領域ですが、C5に異常が生じると、その支配領域にも異常が生じるというわけです。
椎間板ヘルニア等の異常所見をMRI等の画像で確認することができるなど、客観的な所見となり得る検査方法(痛みなどの立証方法でもあります)がありますので、上肢の痛みやしびれがある場合には、後遺障害の等級認定を獲得しやすい症状ではないかと考えられます。
詳しくは、むち打ちによる上肢症状の解説記事をご覧ください。
眼症状
むち打ち損傷患者の中には、視力障害や複視など、眼に症状が出る方もいます。
不思議に思われるかもしれませんが、むち打ちが原因となって、自律神経系に異常が生じたり、前庭神経の異常興奮が生じたりして、眼に症状が現れることはあるのです。
むち打ち損傷患者の35%に眼症状があるというデータもありますので、見過ごせない症状です。
詳しくは、むち打ちによる眼症状の解説記事をご覧ください。
吐き気や嘔吐
むち打ちによって、自律神経系に異常が生じると(たとえばバレー・リュー症候群)、吐き気や嘔吐といった症状をもたらすことがあるのです。
しかも、吐き気や嘔吐といった症状が出ている方のうち、6か月以上も持続する例が33%も存在するというデータもあります。
詳細については、むち打ちによる吐き気や嘔吐の解説記事をご覧ください。
めまい
めまいも、比較的見受けられる症状です(むち打ち損傷患者のうち、23%で生じているという報告もあります)。
原因としては、様々なものが考えられます。
MTBIや内耳の損傷、バレー・リュー症候群(自律神経系の異常)などです。
めまいが慢性化し、症状固定後も残存している場合には、重心動揺計や電気眼振図などの検査を受けることも立証の際に重要と考えられます。
詳しくは、むち打ちによるめまいの解説記事をご覧ください。
難聴や耳鳴り
それほど多くないものの、むち打ちによって、耳鳴り(難聴を伴う)を生じる方もいらっしゃいます。
原因としては、内耳の影響や、頸部軟部組織の緊張による異常亢進等が考えられます。
耳鳴りがある場合には、それによって後遺障害として認定される可能性があります。
難聴を伴う耳鳴りが残存している場合には、オージオグラムのほか、ピッチマッチ検査、ラウドネスバランス検査を受けることも重要でしょう(後遺障害等級認定のため)。
詳しくは、むち打ちによる難聴・耳鳴りの解説記事をご覧ください。
その他の症状
むち打ちによる慢性期症状については多様なものがありますが、上記の他に、以下のようなものも挙げられます。
むち打ちだからといって、甘く見ずに、医師ときちんと相談して、適切な治療を受けることが肝要です。
・頭部や顔のしびれ
・腰痛
・自律神経症状
・不眠や集中力低下など
・うつ
・全身の知覚過敏
・繊維筋痛症