むち打ち・頚椎捻挫相談室

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 交通事故の被害者の中には、むち打ち損傷や頚椎捻挫といった診断を受ける方が多いように思われます(傷病名としては、他に、頚部挫傷(頸部挫傷)、外傷性頚部症候群(外傷性頸部症候群)、外傷性頭頚部症候群(外傷性頭頸部症候群)、外傷性頚椎捻挫(外傷性頸椎捻挫)、むち打ち関連障害、むち打ち症候群などとされることがあるようです)。

 このような、むち打ち・頚椎捻挫が原因となって、頭痛・頸部痛・四肢のしびれなどが生じることがあります。これらの症状を治療するために数ヶ月通院される方もいます。通院によって症状が消えてくれればよいのですが(完治)、人によっては、痛みやしびれなどが残存してしまうこともありますので、あまり軽く見るべきではないでしょう。ここでは、交通事故のため、むち打ちや頚椎捻挫といった診断を受けられた方のために、アドバイスを記載しています。

痛みやしびれを感じたらすぐ病院へ

 頚椎捻挫やむち打ちによってどのような症状が発生するかはケースバイケースです。むち打ちの慢性期症状として、最も多いのが首の痛み(頚部痛)、次いで頭痛となります。このほか、腕や指といった上肢の部分の痛みやしびれ視力障害や複視などの眼症状吐き気や嘔吐めまい難聴や耳鳴りなどがあります。このような自覚症状があれば、すぐに病院に行って、治療を受けるべきです。

 治療を早期に受けるべき理由の第一は、ご自身の身体のためです。健康を取り戻すためにも、早期に医師による治療を受けるべきです。

 早期治療が重要な理由の第二は、因果関係です。交通事故の被害にあった後、痛みやしびれなどの症状がでた場合、それが、交通事故が原因として発生しているということ(つまり因果関係があること)は、被害者が立証しなくてはなりません。交通事故発生日から治療開始日まで、日数が空けば空くほど、因果関係を否定されるリスクが高まりますので注意が必要です(つまりは、交通事故が原因で痛みやしびれが生じているのであれば、事故直後か、事故後間もないうちに通院を開始するのではないか、通院するまで時間が空いているということは、別の原因があるのではないか、という反論を許すおそれがあります)。

医師の指示にしたがって、きちんと通院しましょう

 治療が開始されたら、医師の指示に従い、きちんと通院しましょう。

 しばらくすると、リハビリも始まるでしょうから、それもサボらずに受けるべきです。

 継続した治療を受けるのは、もちろん、治療のためですが、後々の示談を見据えた場合に3つ理由があります。


 継続して通院すべき理由の第一は、傷害慰謝料です。交通事故の被害にあい、ケガをすると、後述する、傷害慰謝料(入通院慰謝料)がもらえます。傷害慰謝料の金額は、通院期間や実通院日数(実際に、病院に通院した日数)に応じて変化します。通院期間に比べ、実通院日数が著しく少なければ、慰謝料も減額されるおそれがあります。


 継続して通院すべき理由の第二は、因果関係です。通院の日数があまりに空きすぎると、因果関係を否定されるリスクがあります(たとえば、最初の通院から1ヶ月ほど期間をあけてから、継続して通院をしたという場合には、1ヶ月の間に何か他の原因が生じて、痛みやしびれが出たのではないか、という疑念を抱かせるおそれがあります)。


 継続して通院すべき理由の第三は、後遺症(後遺障害)です。むち打ちや頚椎捻挫による痛み・痺れは、大半は治療により完治するもの、と言われています。しかしながら、痛みや痺れが残ったまま症状固定を迎え、治療を打ち切られてしまう方もいます。痛みや痺れのような神経症状が残った場合に、後遺障害として認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能となります。


 もっとも、痛みや痺れが残っていても、それで直ちに後遺障害慰謝料や逸失利益が請求できるというものではなく、痛みや痺れが残っている(つまりは後遺症がある)ということを立証しなくてはいけません。

 後遺症が残っているかどうかは、裁判所が独自に認定することも可能ですが、通常は、自賠責保険(共済)の後遺障害等級認定手続によって認定されます。裁判所は、自賠責の認定結果に拘束されませんが、自賠責の認定結果を重視する傾向にありますので、非常に重要となります。また、交渉での解決をはかる場合にも、保険会社は、自賠責保険・共済で、後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益の支払いを拒む傾向にあることも理由です。

 自賠責保険・共済が、むち打ちや頚椎捻挫によって、痛み・痺れといった後遺症が残っているかどうかをどのように判断しているのかは、いささか不透明な部分はあります。ただ、弁護士の経験上、症状の連続性や治療経過にも注目しているように思われます。継続的に通院しなければ、症状の連続性や治療経過も不明確になりますので、後遺症が残った場合に備え、きちんと通院することが重要です。

過失割合にご注意

 交通事故の被害にあわれた方の一部は、過失相殺が問題になることがあります。過失相殺とは、被害者に不注意や落ち度がある場合に、損害賠償額が減額される、というものです。

 過失相殺は、既払いの治療費も対象となりますので注意が必要です(つまり、保険会社から「今まで払った治療費のうち、あなたの過失は何割なので、その分返してね」と後になって言われるわけです)。交通事故の被害者の方は、自由診療で通院されることが多いですが、自由診療は保険診療と比べて治療費が高額化する傾向にあります。そうすると、後々の示談の場面でも、大きな金額の過失相殺を主張されるリスクがあります。

 そのため、過失相殺が問題になり得る事故や加害者が任意保険に加入していないようであれば、健康保険や労災を使って通院することで治療費を安く抑えることも考慮にいれるべきでしょう。

 また、過失が問題になり得る案件では、自身が加入している保険から、過失相殺された部分が補てんされる可能性があります(人身傷害付帯など)ので、示談の際には、この点も注意が必要でしょう。

整骨院・接骨院・鍼灸院をメインに通うべきか?

 むち打ち・頚椎捻挫にあわれた方の中には、整骨院・接骨院・鍼灸院をメインに通われる方もいますが、これにはリスクがありますので注意が必要です。

 リスクの第一は、治療費(施術費)が払われないおそれがあることです。裁判所は、整骨院・接骨院・鍼灸院の施術費を当然に認めてはいません。症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合には認められる傾向にありますが、とくに医師の指示がない場合などには注意をしておくべきでしょう。

 リスクの第二は、後遺症の認定です。接骨院や整骨院で受けられるのは、医師による治療ではなく、施術です。後遺障害の認定にあたっては、痛みやしびれが医学的に説明できるか(もしくは証明できるか)が一つのポイントとなります。医師の診断を受けに行かなくなると、適切な診断や検査を受ける機会を逃し、医学的な説明や立証に窮するおそれがあります。接骨院や整骨院に通う回数を多くするあまり、病院へ行かなくなるような事態にまでならないよう、注意が必要でしょう。

通院中は、画像撮影や必要な検査を受けましょう

 後遺障害認の等級定に当たって、重要なポイントです。

 交通事故のため、むち打ち・頚椎捻挫の被害を受けると、痛みやしびれが残ることがあります。痛いかどうかというのは、他人が外から見ただけではわかりませんが、後遺障害の等級認定にあたっては、これをい立証(説明)していく必要があります。MRIなどの画像を用いたり、神経根症状誘発テストの結果などの証拠(エビデンス)を出さなければ、認定は難しいでしょう。そのため、通院中は、必要な検査をきちんと受けて、後々の後遺障害の立証に備える必要があります

 たとえば、むち打ちのため、頚椎椎間板ヘルニアになることがあります。椎間板ヘルニアがあるということは、痛みやしびれが残っているということの有力な手がかりになります。椎間板ヘルニアになっているか否かは、MRI画像が最も有力な所見となり得ると考えられます(ヘルニアは、単純レントゲンやCTでは通常映りません。また、MRIでも、古い機器では画像が不鮮明で判明しないこともあるので、注意が必要です)。

 また、MRIで椎間板ヘルニアが確認されたからといって、それで直ちに痛みやしびれが残っていることの証明にはなりません。ヘルニアになってても、痛みやしびれがなどの症状が出ない方もいます。そこで、神経学的なテストを受けておくこともポイントです。スパーリングテストジャクソンテストのような神経根症状誘発テスト、深部腱反射テスト筋萎縮検査針筋電図検査サーモグラフィーなどを行ったところ、ヘルニアで圧迫されている神経根の支配領域に異常な反応がでている場合には、これも痛みやしびれが残っていることを立証する有力な手がかりになります。

後遺障害の申請には注意しましょう

 自賠責の後遺障害申請のルートは、大きく分けて2つあります。

一つ目は、交通事故の加害者が加入している保険会社が申請するルートです。事前認定といわれている方法です。弁護士などの専門家に頼らない方は、この方法をとられる方が多いです。しかし、この方法の場合には、一般的に、保険会社は、後遺障害認定されるためのアドバイス等はしてくれないでしょう。

 二つ目は、交通事故の被害者または弁護士などの代理人が申請する、被害者請求というルートです。アウル東京法律事務所では、この方法をおすすめしています。というのも、自賠責の審査は原則として書面審査となるため、どのような書類を集め、どのような書類を提出するか、という判断が重要になってくる、と考えているからです。後遺障害の申請を考えられている方は、ぜひ、アウル東京法律事務所にご相談ください(交通事故の被害に関する相談は無料)。

むち打ち・頚椎捻挫の後遺障害

 むち打ちや頚椎捻挫で痛みやしびれが生じた場合に、一般的に等級認定が考えられる後遺障害は、

  1. 1. 「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)
  2. 2. 「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)

です。

1. 「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)と認定された場合

後遺障害慰謝料:110万円
逸失利益:基礎収入×労働能力喪失率(喪失率表では、0.05)×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数 (むち打ちの場合には、5年程度に制限される例が多いところ、5年の場合は、4.3295)

の請求が考えられます(※赤い本基準を参照)。

2. 「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)と認定された場合

後遺障害慰謝料:290万円
逸失利益:基礎収入×労働能力喪失率(喪失率表では、0.14)×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数 (むち打ちの場合には、10年程 度に制限される例が多いところ、10年の場合は、7.7217)

の請求が考えられます(※赤い本基準を参照)。

 14級9号として認定されるか、12級13号として認定されるかは、このような痛みやしびれといった後遺症が医学的に『証明』できるかにあるとされています。すなわち、「障害の存在が医学的に証明できるもの」が12級、「障害の存在が医学的に説明可能なもの」が14級という考え方が採用されているようです。医学的に証明できる、とするためには、X線やCT、MRIのような画像検査や神経学的な検査の結果で証明することが考えられます。

 なお、症状固定後も、痛みやしびれが残っている場合には、必ず上記のような後遺障害が認定される、というわけではありません。痛みや痺れが残っており、今も苦しんでいるということはきちんと立証していかなくてはいけません。痛みや痺れが残っているものの、後遺障害の等級認定としては非該当とされてしまうこともありますので、注意が必要です。

示談書にサインをする前に注意しましょう

 示談書を送られてきたら、サインをする前に、果たしてそれが妥当な金額なのかどうか、注意しましょう。示談書にサインして、送り返してしまった後に金額に疑問を抱いても遅いです。示談書(免責証書)には、一般的に、清算条項というものがついています。示談をした後に、示談内容をひっくり返したり、他に請求し忘れたものを請求することは非常に困難です。サインをする前に、まずは、弁護士に相談されてはいかがでしょうか。

 サインをする前に注意すべき点は、『示談をする前に注意すべき3つのポイント』や上記の後遺障害が認定された場合に請求できる項目も参照してみてください(ただし、どのような項目が増減されるかはケースバイケースですので、上記3つのポイントで網羅はできていません。自分で調べるだけでなく、弁護士に相談するのが一番です)。

 保険会社は、一般的に、これが任意保険基準です、と言って示談書を提示してきますが、弁護士は通常、裁判基準で請求します。裁判基準というのは、仮に裁判をしたら認められるであろう金額です。慰謝料、休業損害、後遺障害部分(後遺障害慰謝料や逸失利益)などの項目は、経験上、任意保険基準よりも裁判基準のほうが高額になることが多いです。任意保険基準は、単に、保険会社の内部基準に過ぎませんので、これを受け入れる必要はありません。アウル東京法律事務所では、無料法律相談も実施しておりますので、示談書にサインする前に、まずはご相談ください。


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