【ご質問】
むち打ちや頚椎捻挫で、後遺障害の等級認定を狙う場合には、どのような神経学的検査を受けるべきですか?
【ご回答】
以下、むち打ち損傷でよくあり、検査方法も豊富な、上肢のしびれ・痛みが生じている場合を前提に解説します。
まずは、深部腱反射の検査が重要と考えられます。
このほか、スパーリングテストやジャクソンテストのような神経根症状誘発テストも有効な場合もあります。
これらに加えて、筋萎縮検査も行ってはいかがでしょうか。
検査の客観性を重視すべき
神経学的検査には様々なものがありますが、中には、被検査者が意図的に異常な反応を出すことができる検査手法があります。
たとえば、握力検査が分かりやすいでしょう。
長期間、神経に麻痺が生じると、麻痺がでている部分は次第に使わなくなりますので、筋力も低下します。
すると、右腕にだけしびれが残っているという人の場合、右の握力が左の握力と比べ、低くなる傾向にあります。
ただ、これは簡単にごまかすことができます。
左手の握力を測定するときには力を入れるが、右手の握力を測定するときには、わざと力を抜くようにすれば、簡単に異常な数値を出すことが可能となります。
後遺障害を認定する機関としても、このようなごまかしが可能な検査には、疑ってかかるのではないかと考えられますので、被検査者の意思ではごまかせないような、客観的な検査手法を受けていくべきでしょう。
深部腱反射と筋萎縮検査は客観的
深部腱反射は、腱を打診することによる、反射を診る検査手法です。
反射はごまかしようがありませんので、この検査はとくに重要と考えられます。
次に、筋萎縮検査は、腕(筋肉)の太さを計測する検査手法ですが、こちらもごまかしようがないので、重要ではないかと考えられますが、筋肉が細くなる理由は、様々な要素が考えられますので、深部腱反射と比べると、重要性は一段落ちるのではないかと考えられます。
神経根症状誘発テストも有効
スパーリングテストや、ジャクソンテストのような神経根症状誘発テストは、痛みやしびれ感を確認するテストです。
そのため、客観的な検査手法とはいいがたいのですが、比較的多く行われ検査であり、また、頚椎椎間板ヘルニアになっていることがMRI等で確認できるような場合には、この裏付けとなりえますので、医学的な立証もしくは説明をするにあたって、比較的有用な検査になると考えられます。
病的反射は中枢神経障害
このほか、神経学的検査として、ホフマン反射、トレムナー反射、ワルテンベルク反射、バビンスキー徴候等の病的反射を確認する検査手法があります。
しかしながら、これらは、むち打ちや頚椎捻挫で後遺障害の等級認定を狙う場合には、有効とはいえないと考えられます。
なぜなら、むち打ちや頚椎捻挫の場合、末梢神経障害での等級認定をねらうのが一般的であるのに対し、これらの病的反射は中枢神経障害の確認手法だからです。
このほかの検査
このほか、先ほど説明した握力検査や、徒手筋力評価(MMT)という検査手法もありますが、いずれも、被検査者が自分の意思でごまかすことができるので、あまり重要ではないと考えられます。
もっとも、これらの検査結果を補助的に用いることは考えられますので、検査結果、異常があるようであれば、提出していくべきでしょう。